中学生の定期テスト満点戦略(5-4)国語④論理的記述力編

中学生が国語の成績を上げるには、学校の勉強だけでは不十分で、国語力自体を上げる必要があります。

このページでは国語力-読解力・語彙力・論理力(論理的思考力+論理的読解力+論理的記述力+論理的解答力)など-のうち、一般の記述問題での「論理的記述力」を培う勉強法について書いていきます。

1.「論理的記述力」とは

このページで言う「論理的記述力」は、作文・意見文・小論文などでの論理的記述力ではなく、10~100字前後の国語の一般的な記述問題での記述力のことです。作文・意見文の記述力については【作文・意見文の最速上達法】に書いています。

「一般的な記述問題での論理的記述力」とは、「合格点が取れる記述が書ける能力」=「設問にきちんと答えた形式と内容を備えており、回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスが入っており、文法的に正しく、意味が通じ、分かりやすく、論理のはっきりした日本語を書ける能力」のことです。

逆に、「論理的でない回答(記述)、間違いの回答」とは、例えば、「設問に答えていない、回答に入れるべきキーワードとキーセンテンスが入っていない、文末が求められているものと違う、主語と述語がねじれている(つながっていない、合っていない)、幾通りもの解釈が可能、主語や目的語など必要な言葉がない、文章が分かりにくい、つじつまが合わない」などです。

2.記述問題を書けるようにする5つの重要ポイント

2.1.「問題文のキーワードとキーセンテンス」に印を付ける

キーワード(10文字未満)とキーセンテンス(10文字以上)は要点(重要部分)であり、記述問題はたいてい、要点に関わる問題を出しますから、適切な「問題文のキーワードとキーセンテンス」に印を付けられれば、「記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」を探しやすく、論理の流れ(要点の流れ)も覚えていられるので、合格点が取れる記述が書けるようになります。

問題文のキーワードとキーセンテンスの探し方は【要約マニュアル】に詳しく書いています。

【現代文も古文も初めて学年1位を取ることができました】

Fさん(中学3年生、千葉県)

10月は中間テストがありました。今までは勉強を完璧にしたつもりでも国語の点数が思うように上がりませんでした。前回は76点(平均64点)でした。

テスト前に先生から教えていただいた勉強法、例えば、キーワードとキーセンテンスに印を付ける方法選択肢問題の解き方記述問題の書き方意見文の書き方に加えて、教科書を何度も音読することなどでテスト対策をしたら、現代文は92点(平均63点)で、初めて学年1位を取ることができました

また、古典(古文)は、現代語訳を暗記すること品詞分解の方法文法や古文単語の暗記法などを教えていただき、96点(平均71点)で、これも初めて学年1位を取れました。

次回の期末テストもこのやり方で勉強したいと思いました。

2.2.「記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」を探す

「問題文のキーワードとキーセンテンス」と「記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」は紛らわしいですが、異なります。前者は問題文を読むときに付けるキーワードとキーセンテンスで、後者は記述の回答に入れるべきキーワードとキーセンテンスです。

記述問題では特定の言葉が採点基準になり、それは問題文と設問を論理的に読めば特定できるように問題が作られています。その「特定の言葉」が「記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」です。

よって、記述問題を解く上で最も重要なのは、必要十分な数の「記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」を見つけることになります。

2.3.とにかく自力で執念を持って書く

記述問題で、「解けません」「書けません」と言って書かないで答えを見る人がいます。あるいは、当塾の場合、「分かりません」と言って書かないで授業を受ける人がいます。これでは記述力は上がりません。

記述問題の回答は自力で書くしかありません。とにかく必死に考え、一言でも書き、書き足し、修正し、という過程を経て、だんだんと書けるようになるのです。書かなければ記述力は上がりません。

では書けないときにどうやって書くかというと、「本文を3回読んで回答に入れるべきキーワードとキーセンテンスを探す⇒それでも書けない⇒後日、本文を3回読んで解く⇒それでも書けない⇒本文を3回読んで解く⇒それでも書けない⇒後日、本文を3回読んで回答に入れるべきキーワードとキーセンテンスを探す」と3回くらいは粘って、何か書きます。

何度も読んでいくと理解が進み、だんだん回答に入れるべきキーワードとキーセンテンスが見つかり、書けるようになります

2.4.普遍的な解き方を身に付ける

国語の成績を上げるには、優れた問題集(もしくは塾の授業や映像授業)で、「普遍的な解き方=同じ種類の問題ならどの問題でも使える解き方=解く時の一貫したプロセス」を身に付けることが必要です。

言い換えれば、どういう種類の問題を見ても、「最初に何をして、次に何をして、最後に何をしたら正解に到達するか」のプロセスが分かるようにするのです。これができれば、サッサと問題が解けるようになります。

「記述問題の種類」は、主に「説明せよ」問題、理由説明問題、要約問題、指示語問題の4種類しかありません。この4種類について、解き方を公式的に覚えておけば、記述問題が格段に解きやすくなります。

2.5.普遍的な解き方を問題集で身に付ける

普遍的な解き方を習得するには問題集が最適です。なぜなら、優れた問題集には「解くプロセス」が書かれており、中学生はそれを何度でも辿り、マーカーを引き、覚えることができるからです。

一方、塾・映像授業の講義では、「普遍的な解き方」を解説できる講師もいますが、「解くプロセス」は「口頭」や「プロセスが断片的に書かれた板書」でなされるので、把握しづらく、覚えづらいです。

その点、創賢塾では、問題集の利点と授業の利点の相乗効果で成績を上げて行きます。すなわち、市販の優れた問題集を使い、「普遍的な解き方」「解き方のエッセンス」を授業で繰り返し、授業後には問題集の解説を読んで「普遍的な解き方」を習得してもらいます。

普通の中学生は問題集の解説を読んでも、どこが重要か、どこを覚えればよいか分からず、なかなか「解き方」を習得できませんが、創賢塾の授業では、「論理的な読み方・解き方・書き方」を習得するために必要な知識を繰り返し強調するので、記述問題であれ、選択肢問題であれ、問題を見たら解く手順が分かって、合格点を取れる記述問題がサラサラと書けるようになります。

3.記述問題全般に共通した解き方

3.1.記述問題全般の解き方

【記述問題全般に共通した解き方】

(1)傍線部があればすぐに問題を見て、解く:傍線部があれば、すぐに問いを確認し、傍線部の前後5行~15行を読んで、回答に入れるべきキーワードとキーセンテンスを探し、問題を解きます。

(2)設問が全て:記述問題でも選択肢問題でも、「設問」が最も重要です。設問をきちんと見ない人は意外に多いので、気をつけましょう。

 「設問(問い)」によって答えや答え方が変わりますから、設問を丁寧に読み、何を聞いているか、何をどういう形で答えなければならないかを明確にします。その際、注意すべき条件があればそれに印を付けます。

 例えば、「筆者の体験とこのときの感情をふまえて、答えの末尾が『こと』に続く形になるように50字以内で書きなさい」とあれば、「体験、感情」を丸で囲い、「こと」は字数に入れないで書きます。

 また、「文中の言葉を使って」とあれば、抜き出しではなく文中の言葉を組み合わせて書きます。

(3)文末を決める:設問によって文末は決まるので、最初に文末を決めます。

 例えば「なぜですか⇒~~から。」「理由は何ですか⇒~~という理由/~~から。」「どういうことですか⇒~~こと。」「どういう気持ちですか⇒~~という気持ち。」「どのような人間ですか。⇒~~という人間。」など。

(4)指示語の確定:傍線部、もしくはその周辺に指示語(それは、これは、など)があったら、まず、指示の内容を確定させます。そうしなければ傍線部の意味が明確には分からないからです。

 これをしない人がかなりいますが、そういう人は正解にたどり着けないことが多いです。

(5)回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスを探す:記述問題には、回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスが必ずあります。よって、まずはそれを探します。キーワード・キーセンテンスの探し方は以下に書いています。

(6)キーワード・キーセンテンスの数:自分の記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスの数は、制限字数によって変わります。例えば20字なら2つ前後、30字なら3つ前後、50字なら5つ前後です。そのキーワード・キーセンテンスが採点基準になります

(7)字数を気にせずどんどん書く:書くときはまずは制限字数をあまり気にせず書きます。書いた字数が制限字数を超えたと思ったら、文法的に正しく、日本語として意味が通じ、論理的な文に整えてまとめます。

(8)制限字数に対して書くべき量:8割以上が原則です。「20字以内」なら16字以上、「50字以内」なら40字以上など。

 ただし、「25字以内」「45字以内」などの中途半端な制限字数の場合、それぞれ、21字以上、41字以上書く必要があります。わざわざ中途半端な字数にするということは、20字、40字では足りない、ということを示しています。

(9)見直しをする:回答を書き終わったら必ず見直しをします。

 チェックする内容は、誤字・脱字がないか、「でも、だけど、違くて」などの口語・俗語を使っていないか、文法的に正しい日本語になっているか、主語・目的語など必要な内容が入っているか、因果関係は整っているか、意味が通じるか、分かりやすいか、設問にきちんと答えているか、などです。

3.2.回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスの探し方

記述問題の回答を書くときに最も重要なのは、回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスを探すことです。ここではその探し方を書いていきます。

【回答に入れるべきキーワードとキーセンテンスの探し方】

(1)傍線部問題1:近くを探す。

 傍線部に関する記述問題では、多くの場合、傍線部の5~15行前後にキーワード・キーセンテンスがあるので、まず、傍線部の前後5行をよく読んで、自分の記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスを探します。

 そこになさそうなら前後10行に広げ、それでもなさそうなら更に前後15行に広げて探します。そこを1~2回読んで見つからなければ(それ以上広げても見つかる可能性は低いので)、いったん諦めて次の問題へ行きます。

 テストの場合、後で時間があれば戻ってきます。自宅で問題集を解いているときは、大問の最後まで解いたら戻ってきて再度解きます。

(2)傍線部問題2:キーワード・キーセンテンスが傍線部から遠く離れている場合もある。

 傍線部に特徴的なキーワード・キーセンテンスがある場合、遠くても、そのキーワード・キーセンテンスの関連箇所を探します。

 例えば、傍線部(70行目)に「欧米の現代文学」とあり、本文でこれに言及されているのが65~72行目と、10~15行目だけである場合、10~15行目も探します。

(3)傍線部がない場合:設問のキーワード・キーセンテンスの関連箇所を探す。

 設問の特徴的なキーワード・キーセンテンスをもとに、本文を探します。

 例えば、設問に「コスモロジー」とあれば、本文でこの言葉が出ている箇所を探します。

3.3.記述問題の4つの種類

上記の通り、記述問題の種類は、主に以下の4つです。ここからは、それぞれの問題形式ごとの解き方を書いていきます。

(1)「説明せよ」問題
(2)理由説明問題
(3)要約問題
(4)指示語問題

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4.「説明せよ」問題の解き方

4.1.「説明せよ」問題とは

「説明せよ問題」とは、「傍線部の意味を説明せよ」「分かりやすく説明せよ」「どういうことですか」のような問いのことです。

記述問題では最も多く出される問題です。

4.2.「説明せよ」問題の解き方

「説明せよ」とはどういう意味かというと、「傍線部の意味が分かりにくく、傍線部周辺で意味を言い換えた個所があるから、それを使って、わかりやすく言い換えてくれ」ということです。

よって、具体的にすることは以下の通りです。

【「説明せよ」問題の解き方】

【説明せよ問題の解き方=(1)傍線部の文章構造をそのまま使って、(2)本文の言葉をできるだけ使い、(3)意味が分かりにくい表現を分かりやすく言い換えて、(4)日本語として意味が通じるように書く】

(1)傍線部の文章構造をそのまま使って:主語や目的語、述語などの構成要素と順番を変えずに、主語や目的語、述語があってそれが分かりにくければそれぞれ言い換える(主語や目的語がないときは、書かなくて良い場合も補うべき場合もある)、ということです。

 例えば、「『きらめきがここに生き生きと固定されている』とはどういうことですか」という問題の場合、「きらめき」が比喩で分かりにくいので言い換えた箇所を探して主語として書き、「ここに」の指示内容を主語の後に書き、「生き生きと」を言い換えた箇所をその次に書き、「固定されている」を言い換えた箇所を述語として書きます。

(2)本文の言葉をできるだけ使い:たいていは、本文に分かりやすく言い換えた箇所があるので、それを探して使います。言い換えた箇所がなければ自分の言葉で言い換えます。

 言い換えた箇所は、多くは前後5~15行にありますが、遠くの場合もあります。それは、上でも書いたように、傍線部のキーワードに関連のある箇所を探します。

(3)意味が分かりにくい表現を分かりやすく言い換えて:「意味が分かりにくい表現」とは、「指示語、短い簡略な表現、比喩表現、抽象的表現、難しい表現」などのことです。

 指示語は元の語句・表現を探し、短い簡略な表現は長くて分かりやすい表現を、比喩表現は直接的な表現を、抽象的表現はより具体的で分かりやすい表現を、難しい表現はより易しく分かりやすい表現を探し、言い換えます。

 例えば、「『自由な知』とはどのようなことか」という問題では、「自由な」や「知」は短い簡略な表現、もしくは抽象的表現なので、分かりやすく言い換えた内容を前後5~15行で探し、全体の意味が通じるように、「~~という知識(知のあり方)」などの、本文にある言い回しで終えるように書きます。

(4)日本語として意味が通るように書く:最後に、言い換えた文が、それ自体で意味が通るように、チェックします。

5.理由説明問題の解き方

5.1.理由説明問題とは

理由説明問題とは、「なぜか」「どうしてか」「理由は何か」のような問いの問題です。

記述問題では、「説明せよ」問題に次いで多い問題です。

5.2.理由説明問題の回答の書き方

理由説明問題では、傍線部や問いが因果関係の「結果」で、自分の回答が「原因(理由)」になるように答えを書きます。

例えば、「『太郎はため息をついた』とありますが、なぜため息をついたのですか」という設問の場合、「~~だから(=原因)、太郎はため息をついた(=結果)」の「~~」に相当する部分を本文中から探して書きます。

5.3.回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスを探す

傍線部の理由説明問題なら、回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスは通常は傍線部近くにありますので、前後5~15行を読んで探します。

傍線部問題でない場合は、1章で書いたように、設問の特徴的なキーワードから、探す範囲を特定します。

5.4.自分の回答の検証方法

理由説明問題の検証法(自分の回答が正しいかどうかを検証する方法)は、問いを結果、自分の回答を原因にして一文にし、読む(書く)ことです。

例えば、上記の「『太郎はため息をついた』とありますが、なぜため息をついたのですか」という設問で、「喜びの瞬間はすぐに消え去るから」と答えを書いた場合、「喜びの瞬間はすぐに消え去るから、太郎はため息をついた」とつなげて考えて(あるいは書いて)、理由として正しく、かつ、きちんと論理・意味が通じていればOKだし、そうでなければ書き直します。

また、例えば、「点的論理の視点からは興味あるものである俳句の表現が、線状の論理からは理解しにくいものである理由は何か」という設問で、「俳句は省略の多い表現だから」と答えを書いた場合、「俳句は省略の多い表現だから、(点的論理の視点からは興味あるものである俳句の表現が)線状の論理からは理解しにくい」とつなげてみます。これが理由として正しく、意味や論理が通じていればOKだし、論理や意味が通じていなければ、書き直します。

5.5.同語反復(トートロジー)に気をつける

「同語反復」とは、「彼は善い人だから善人だ」のように、同じ意味の言葉・内容が繰り返されていることで、理由説明問題の回答としては、同語反復は内容がないので、不正解になります。

例えば、「『批評精神は主張を抑制する』のはなぜですか」という問題で、傍線部前後で探して、「批評は主張の断念という果敢な精神によるものだから」と書いたとして、これが正解かどうかを検証するには、「批評は主張の断念という果敢な精神によるものだから、批評精神は主張を抑制する」とつなげて書いてみます。

これは前半(原因:主張の断念)と後半(結果:主張の抑制)がほぼ同じ内容なので、同語反復になり、不正解になります。

こういう解答を書く人は結構いて、しかも、書かないと同語反復とは分かりにくいので、間違えやすいのです。

6.要約の書き方

要約は、適切なキーワードとキーセンテンスを探し、それを混ぜて意味が通じるように書きます。

要約の書き方は【要約マニュアル】に詳しく書いています。

7.指示語問題の解き方

7.1.指示語問題

指示語とは、「こそあど言葉(これ、それ等)」のことで、指示語問題とは、傍線部の指示語の内容を言い換える設問です。

例えば、「『それ』は何を指示しているか答えなさい」などです。

7.2.解き方の手順

【指示語問題の解き方】

(1)前後5~15行を探す:指示語の内容は、前の場合が多いですが、後のことも多いので、前後5行前後を読んで該当箇所を探し、それで無さそうなら前後10行に広げ、それでも無さそうなら前後15行に広げて、内容を探します。

 指示語の場合は15行以上離れている場合はマレなので、たいてい見つかると思いますが、見つからなければ、いったん諦めて次の問題へ行き、後で時間があれば戻ってきます。

(2)自分の言葉に勝手に変えない:指示語問題では、原則、「本文の言葉をそのまま」使います。「そのまま」と言っても、それは「言葉(単語・連語)」をそのまま使うのであって、別々の文にある言葉を組み合わせる場合もあれば、「一文」をそのまま使う場合もあります。

 現代文では「自分の考え」は問われておらず、同様に、自分の考えで勝手に言葉を変えてはいけません。減点される危険があります。

 例えば、本文に「認識」とあり、それが分かりにくいから自分の回答では「理解」に勝手に変える、などをする人がいますが、これは減点対象になる可能性があります。

(3)文末に注意する:文末の形は、問いに合わせます。例えば、「『その生物観』とは何を指すか」という問題なら、「~~という考え方(ものの見方、生物観)」などにします。

(4)分かりやすく書く:回答はできるだけ分かりやすく書きます。「分かりやすい」とは、簡潔で、主語述語・目的語などのあるべき言葉がある、論理が通じている、抽象的・漠然としている内容でない、などです。

 例えば、「『この矛盾』とは何を指すか」という設問の場合、「矛盾」とは「2つの話・命題が同時に成立せず、つじつまが合わないこと」なので、「何と何が両立しないか、論理のつじつまが合わないか」を書かなければなりません。片方だけではダメです。

(5)代入して回答を検証する:指示語問題の答えが正しいかを自分で検証するには、単純に、自分の答えを指示語に代入すれば良い。それで意味が通じればOKだし、意味が通じなければ探し直します。

 単純なのですが、意外とやらずに不正解になる人が多いので、必ず検証します。

8.文法的に正しい文章を書く技術

8.1.文法的に正しくない3つの内容

(1)主語と述語がねじれている:主語と述語が合っていないことを「主語と述語がねじれている」と言います。

 例えば、「外国人の関心は、日本食、京都などの伝統的な地域などを好みます」

 ⇒「外国人の関心は、日本食、京都などの伝統的な地域などにあります」or「外国人は、日本食、京都などの伝統的な地域を好みます」。

 「近代社会の特徴の一つは、各国が社会福祉制度を充実させてきた」

 ⇒「近代社会の特徴の一つは(=主語)/社会福祉制度を充実させてきたことだ(=述語)」など。

(2)述語1つに対して主語が2つある

 例えば、「近代社会の特徴の一つは、社会福祉制度を充実させてきたのは事実だ」=「近代社会の特徴の一つは(=主語)/社会福祉制度を充実させてきたのは(=主語)/事実だ(=述語)」

 ⇒「近代社会の特徴の一つは(=主語)/社会福祉制度を充実させてきたことだ(=述語)」など。

(3)掛かり関係が完結していない:これは、修飾語があって被修飾語がない文のことです。

 例えば、「現代の研究から、地震が起こる前はナマズが暴れる事実がある」

 ⇒「現代の研究から、地震が起こる前はナマズが暴れる事実があることが分かってきた」。

 「ことが分かってきた」を書かないと、「現代の研究から」が掛かる場所がなく、浮いてしまいます。

8.2.文法的ミスを防ぐ方法

これらの文法的ミスを防ぐには、主語と述語の確定法を身に付け、掛かり関係を練習することが役立ちます。

【主語と述語の確定法】

(1)主語とは:主語は「名詞+はがも」(例:私は、私が、私も)で出来ており、述語の動作の主体です。

 ただし、「はがも」が必ず主語を示すとは限りません。例えば、「ゾウは鼻が長い」の主語は「鼻が」であり、「ゾウは」は「ゾウについては」という意味です。

 また、「私は彼が嫌いだ」の主語は「私は」であり、「彼が」は目的語です(私は彼を嫌いだ、と同じ意味になると考えれば納得できる)。

(2)述語とは:日本語における述語とは、主語の後(多くは点やマルの直前)に置かれて主語とペアを作り、主語の動作や状態を表す言葉です。述語になれる品詞は以下の4つです。

 ①動詞:主に動作を表す。立つ、走る、読む、等。
 ②形容詞:ものごとの状態や性質を表し、「〜い」となる言葉。美しい、等。
 ③形容動詞:ものごとの状態や性質を表し、「〜だ」となる言葉。静かだ、等。
 ④「名詞+だ・である・です・ます(のような助動詞)」:「彼は太郎だ」の「太郎だ=述語」など。

 つまり、述語は、主語の後(多くは点やマルの直前)にある、動詞・形容詞・形容動詞・「名詞+だ(助動詞)」です。

(3)主語と述語を確定させるときには、述語から確定させる:なぜなら、述語は文の最後(もしくは点の直前)にあることが多いので、簡単に見つけられるからです。

 例えば、「ゾウは鼻が長い」の述語は、最後にある形容詞である「長い」。主語を探すときは「長いのは何か?」と考えます。そうすると「ゾウは長い」ではなく「鼻が長い」と分かります。

 「私は彼が嫌いだ」の場合は、最後にある「嫌いだ(形容動詞)」が述語、「嫌いなのは誰か?」と考え、「私は(彼が=彼を)嫌いだ」と分かります。

 ちなみに、好き嫌いなどでは目的語を「を」より、「が」で示す習慣があり、「彼が=彼を」は目的語になります。

(4)以上の確定法を覚え、実際の文章で練習をする:自力で分からない場合は学校や塾の先生に聞きます。

8.3.文法問題集

掛かり関係を練習するには、以下のような国語の文法問題集が役立ちます。

中学 国文法まとめノート」(受験研究社)
くもんの中学基礎がため100%中学国語 文法編」(くもん出版)
くわしい国文法 中学1~3年」(文英堂)
出口汪の新日本語トレーニング」シリーズ(小学館)
はじめての論理国語 小1~6レベル」(出口汪著、水王舎)

9.論理的記述力を鍛えるための問題集

論理的記述力を鍛えるには、記述問題の論理的な解き方・書き方が詳しく解説された以下のような問題集を使います。

「システム中学国語」シリーズ(出口汪著、水王舎)
「中学生版 出口の国語レベル別問題集」
シリーズ(東進)
「解き方がわかる国語 文章読解」(石関直子著、学習研究社)
「やさしい中学国語」(村上翔平著、学研プラス)

10.問題集の「記述問題の正しい解き方」を習得する方法

10.1.何のために国語の問題集を解くのか

あなたは何のために国語の問題集を解いているのでしょうか。

単に慣れるために問題集を解くのであればもったいなさ過ぎます。

結論を言うと、国語の問題集を解く理由は、数学で問題集を解く理由に似ていて、「解き方を習得するため」です。

もう少し国語に即して言うと、「問題集に書かれた論理的な読み方と解き方を習得するため」です。

言い換えると、「他の問題、どの問題でも使える普遍的な読み方、解き方を習得するため」です。この「普遍的な読み方、解き方」が問題集のエッセンスなので、それを習得するのです。

これは塾や映像授業でも同じです。優れた国語講師の「本文の論理的な読み方、問題の解き方」を習得するために授業を受けるわけです。

それを習得できれば、論理的な読み方、解き方ができるようになり、成績が上がっていきます。

しかし、ほとんどの受験生はそんな目的は考えもせず、ただ漠然と問題を解き、授業を受けています。その結果、読み方も解き方も向上せず、得点もなかなか上がりません。

10.2.論理的な読み方を習得する方法

国語の論理的な読み方を習得するにはどうしたらよいのでしょうか。

そもそも、「論理的に読む」とはどういうことでしょうか。

それは、「適切なキーワードとキーセンテンスに印を付け、主張を見つける」ことです。

これについて詳しくは【適切なキーワードとキーセンテンスを見つけられる論理的読解法】に書いていますが、そこに書かれているキーワードとキーセンテンスの探し方のマニュアルを理解し暗記し、実際に問題集を解くときにそれを使い、習熟していけば、「論理的な読み方」を習得できます。

10.3.論理的な解き方を習得する方法

国語の論理的な解き方を習得するにはどうしたらよいのでしょうか。

そもそも、「論理的に解く」とはどういうことでしょうか。

それは、「問題種別ごとの解き方の手順を習得し、問いを見たら解き方の手順がパッと分かり、解ける」ということです。

具体的には、記述問題についてはこのページの解き方を、選択肢問題については【中学生の定期テスト満点戦略(5-5)国語⑤論理的解答力編】の解き方を理解し暗記し、「システム中学国語」などの問題集を解くときにそれを使い、習熟していけば、国語の論理的な解き方を習得できます。

10.4.自分の「記述問題の解き方」を完成させる

記述問題の解き方は、上記の【記述問題の普遍的な解き方】を理解し暗記した上で、実際に多くの問題に当たり、使うことで習得できます。

そして、優れた問題集には、それぞれの【記述問題の普遍的な解き方】が書かれていますから、それも自分の解き方として習得していきます。そうすることで、自分の【記述問題の普遍的な解き方】が完成していきます。

ここではその「問題集に書かれている、記述問題の普遍的な解き方」の習得法を書いていきます。

10.5.問題集を習得する具体的勉強法

問題集に書かれた論理的な読み方・記述問題の解き方を習得するには、具体的には以下のようにします。

【国語問題集の「正しい記述問題の解き方」を習得する方法】

(1)問題を解く

 ①キーワードとキーセンテンスに印を付けながら読む【適切なキーワードとキーセンテンスを見つけられる論理的読解法】に書かれている内容を理解し暗記し、それを使って本文を読み、キーワードとキーセンテンス、主張などに印を付けます。

 キーワードとキーセンテンスは、記述問題でも選択肢問題でも、問題に関わることが非常に多いので、正しく付けられるようにすると、成績が上がります。

 ②記述問題を解く:自分のできる範囲で、できるだけ根拠を持って「回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」を探し、それをつなげて書きます。

 ③書けない場合:本文を3回読んで解き直す:納得できる記述が書けない問題は、できる限り解答・解説を見ず、「本文を3回読んで解き直す」。それでも書けない場合は、解答を見ず、後日また、「本文を3回読んで解き直す」。

 これを3~4回繰り返し、書けるまで粘って、ともかく自力で書きます。

(2)解答・解説を読む

 自力で書けたら、もしくはどうしても書けなかったら、解答・解説を読みます。正解なら解説を読むだけでOKです。

(3)論理的読み方の習得

 ①キーワードとキーセンテンスの探し方を理解し暗記する:中学レベルだとキーワードとキーセンテンスの探し方が詳しく書かれた問題集はありませんが、「システム中学国語」にはある程度載っていますので、問題集と自分が付けたものを比較します。

 そして、自分が付けていなかったものについては、どうしてそれがキーワード・キーセンテンスになるのかを解説をしっかり読んで理解し、その「探し方」にマーカーを引き、覚えます。

 ここで「探し方」とは、「この文章ではこれが重要だからキーワード」、などの無根拠で感覚的なものではなく、「2回以上出てきたらキーワードの可能性が高い」「最後の段落で『しかし』の後だからキーセンテンス」、などの普遍的な探し方(他の国語の問題でも使える探し方)のことです。

 ②復習時に「探し方」を使う:2週間以上経って、解説の内容をある程度忘れた頃に復習します。

 復習の時に、その「探し方」を思い出しながら、キーワードとキーセンテンスに印を付け、解説でまた確認し、「探し方」を覚えます。

 そしてまた2週間後くらいに復習します。復習は全部で3~5回、「キーワードとキーセンテンスの探し方」と「解き方」を習得するまで行います。

(3)記述問題の解き方の習得

 ①「回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスを探す手順」を暗記する:問題集の解説をよく読んで、「回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」の探し方・探す手順を、理解し、「探す手順」を暗記します。

 「探す手順」とは例えば、設問に書いてある言葉から、本文のどこが該当箇所かを判断し、読む範囲を絞る方法、設問に答えるのに必要なキーワード・キーセンテンスの探し方など、他の問題を解く時にも使える普遍的な探し方のことです。

 ②探す手順を3回口頭で再現する:すぐに「キーワード・キーセンテンスを探す手順」を口頭で3回再現します。これにより「解く手順」を頭に定着させることができます。

 ③再度書いてみる:解答を読んで「回答に入れるべきキーワード・キーセンテンス」が全部分かったからと言ってきちんとした回答が書けるかは別問題なので、その問題が間違いの場合、実際に書いてみます。これで記述力が培えます。

 ④復習のとき:ゼロベースで考える:文章内容や解き方を適度に忘れた2~3週間後くらいに復習をします。

 復習時は、解説や解答を覚えていようがいまいが、ゼロベースで(ゼロから自力で考え直して)、記憶した「記述回答に入れるべきキーワード・キーセンテンスを探す手順」だけを頼りに、キーワード・キーセンテンスを探し、書きます。

 ゼロベースで考えるのは、記憶の割合を減らし、思考力を目一杯働かせて、思考力を鍛えるためです。

 ⑤3~5回復習して「解く手順」を習得する

 このように、問題集に書いてある「本文のキーワードとキーセンテンスの探し方」や「解き方」を習得することをインストールと言います。

10.6.記述問題の解答は専門家に添削してもらう

ここまで書いたのは、全て完全自力での「論理的記述力」の伸ばし方ですが、記述力はやはり専門家に添削してもらった方が伸びます。

できれば学校や塾の先生に添削してもらいましょう。

11.終わりに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

この文章があなたの国語の成績アップにつながれば幸いです。

あなたの健闘を祈ります。

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