世界史の論述対策を始めるとき、多くの受験生が、どうやって論述問題集を勉強するか、悩みます。
ただ問題を読んで論述を書き、解答解説を読んでいくだけでいいのか? 復習はすべきか、模範解答を書き写せばいいのか、暗記すればいいのか、暗記するとしてもどうやって100~200もの解答を暗記できるのか……。
分からないことばかりです。このページではこれらの疑問への答えを書いていきます。
簡単に結論を書くと、論述の勉強初期には、知識もなく、書き方も分からないので、「論述を自力で書く」より「教科書類を参照しながら論述を書き、解答解説をしっかり理解したあと、模範解答を暗記する」ことに時間を使います。100~200の模範解答を暗記するのは簡単です。その方法も以下に書いています。
目次
1.論述問題集を勉強することへの素朴な疑問
私は東大受験生の時、日本史の論述対策が必要だったので、問題集を買って、やってみようと思いました。その問題集は100題くらいが載っていましたが、その膨大な問題数と解説の量に、頭がくらくらしました。そのとき私は思いました。
この問題集をやって何の意味があるのか?
たった100題やっても、入試で同じ問題が出る確率はほとんど無い。
でも、一縷の望みに賭けて一応やるとして、どうすればこの100題を書けるようになるのか?
100題も暗記できるわけがない。
苦労して書いても、知識は不十分だし、論述構成法も分からないから、低レベルのものしか書けない。
解説にはたくさんの知らないことが書いてあり、どこまで覚えればいいのか分からない。
あなたはこういう疑問を抱いたことはありませんか?
今なら、私はこれらの疑問全てに答えることができます。その答えを以下に書いていきます。
2.素朴な疑問(1)同じ問題は出ないのに意味はあるの?
疑問1「たった100題やっても、入試で同じ問題が出る確率はほとんどないのだから、論述問題集をやる意味はないのではないか?」への答えは以下の通りです。
2.1.答え(1)記述力アップ
確かに同じ問題は出ないでしょうが、論述問題集や過去問をマスターすることで、記述力は格段に上達します。
論述が書けるようにするには2つの能力が必要です。1つは知識力(通史と俯瞰的知識)、もう1つは記述力(文章力と論述構成力)です。
※「俯瞰的知識」とは、「論述問題で必要になる知識」のことで、具体的には、「タテの歴史(流れ・因果関係)、ヨコの歴史(同時代の地域間の影響関係)、時代・指導者・文化の特徴、戦争・事件・宗教の意義」などを指します。俯瞰的知識を網羅的に暗記していくことと記述力を鍛えることが、正しい論述対策になります。
このうち、記述力の方は、論述問題集1冊と過去問10年分の論述を書き、模範解答を理解し、何度も音読して暗記することで、飛躍的に向上させることができます。
記述力が足りないのは、単純に「優れた論述の模範解答」を「読んだ量・暗記した量・書いた量」が少ないからなので、「論述を書き、自己添削し、模範解答を理解し、何度も音読し、暗記する」ことで、記述力は向上していくのです。
2.2.答え(2)俯瞰的知識の8割を習得できる
確かに同じ問題は出ないでしょうが、論述問題集2冊(300~400題)と過去問10年分の模範解答を暗記することで、論述問題で問われる知識(俯瞰的知識)は8割方網羅できます(残りは教科書類の暗記で対応できます)。
論述問題集や過去問を100問、200問と見ていけば分かりますが、大学入試の論述問題で問われそうなテーマ・知識は似通っています。よって、1問ずつ、1冊ずつ論述問題の解答を暗記することで、論述に必要な知識が増え、初見の問題でもそれを利用して論述が書けるようになっていきます。
小さな努力を大事にしましょう。
「論述問題780題を頭に叩き込んだ」
ブログ「一橋大学合格体験記:世界史論述勉強法」より
論述で問われる観点は大体決まっています。私は河合塾の論述用テキストを用いて、そこに載っている小論述240題ぐらいと、講師がプリントでくれる追加小論述240題ぐらい、大論述(400~600)を300題ぐらい頭に叩き込みました。すべていろんな大学の過去問です。
ここまですれば何を書けばいいか、が分かってきます。聞き方が違っても、答えるところは一緒であることが多いです。
よく考えれば、当たり前なんですが、教科書から逸脱した範囲は、論述ではほぼ出ません。一橋の大論述は、400字なのですが、私は小論述を組み合わせて解答を作り上げるようにしていました。
何度も言いますが大事なのは暗記です。暗記した知識をどういう風に使って点を稼ぐか、という点のみに頭を使います。知識を絞り出せなければ、手も足もでません。ですから、できるだけ数多くの小論述、問題に当たり、自分にストックしていきましょう。
2.3.答え(3)教科書類でカバーする
確かに、実際に自分が受験するときの論述問題のテーマは初見(初めて見る)でしょう。ではその初見の問題に対して、どう対策していったらよいのでしょうか?
それは、過去問20~30年分と論述問題集2~4冊の模範解答を暗記するのと平行して、教科書類の俯瞰的知識を暗記していくのです。
国公立大学の二次試験や共通テストの問題の出典は「教科書」なので、教科書には論述問題で必要になる知識(俯瞰的知識)が網羅されています。よって、教科書類(教科書や教科書を分かりやすく書き直した参考書)を暗記していけば、俯瞰的知識は網羅できるのです。
具体的には、教科書類を国別・地域別にタテの歴史を読んでいく(例えば中国、アメリカなどを選んで読む)、ヨコの歴史・意義・特徴などの俯瞰的知識に注目して教科書類を入試まで読み続ける、そしてそれを「世界史論述まとめ帳」にまとめるなどです。
俯瞰的知識の暗記法については、詳しくはこちらに書いています。
3.素朴な疑問(2)どうすればこの100題を書けるようになるのか?
疑問2「論述問題集の100題の問題に対して、どうすれば合格答案が書けるようになるのだろうか?」への答えは以下の通りです。
3.1.答え(1)確かに普通に解いていっても書けるようにはならないよね
論述問題集を手にした方のほとんどは、模範解答のように書けるようになれるとは思えないでしょう。そして実際、書けるようにはなっていません。みんな、論述問題集の習得法が分からないのです。
普通の受験生は以下のように勉強していると思います。
「論述を自力で、もしくは教科書類を参照して書き、解答解説を読み、理解したら次へ。模範解答や解説全体の暗記はムリなのでせず、復習はしても1~2回」
論述問題で合格答案が書けるようになるには、知識(通史と俯瞰的知識)と記述力(文章力と論述構成力)が必要ですが、この勉強法では知識も記述力も習得できません。その結果、……
「珍妙な解答の山」
「判る!解ける!書ける!世界史論述」(河合塾、10ページ)より
河合塾が実施する「東大即応オープン」「京大即応オープン」「一橋大入試オープン」などの模試で論述問題を採点する時、私たちが遭遇するのは、珍妙な解答の山である。
前後関係が逆であったり、因果関係が逆であったり、異なる時代と地域の事項が一文のなかで混在していたり、細かな事項や人名が、題意とは関係なくただ羅列してあったりなどなど。
超一流大学志望者でも、これが現実です。そしてその原因は、論述問題集の習得法・勉強法が間違っているからです。
3.2.答え(2)模範解答を暗記すれば、解いた問題は書けるようになる
結論としては、「論述問題を解き、模範解答を理解し、50~100回音読して暗記する」のが、論述を書けるようになる最短の勉強法です。
暗記してしまえば、その論述は当然書けるようになりますし、模範解答に書いてある俯瞰的知識も確実に暗記できます。
3.3.答え(3)模範解答を暗記すれば、論述を書く能力が上がる
過去問10年分と論述問題集1冊(合計約200~300問)の模範解答を理解した上で暗記すれば、暗記した問題の論述が書けるようになるだけでなく、論述を書く能力自体が飛躍的に上がります。
なぜなら、論述を書くのに必要な知識(俯瞰的知識)を数多く暗記でき、また、暗記した解答の論述構成法を使って論述が書けるようになるからです。そのほかに、「上手な日本語で書かれた文章を暗記することで、文章力(日本語を書く力)が上達する」という副産物もあります。
模範解答の暗記法は以下にも書いていますし、詳しくはこちらにも書いています。
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4.素朴な疑問(3)私が100題も暗記できる方法なんてあるの?
疑問3「論述問題集の100題の模範解答や解説に書かれている知識を暗記できる方法なんかあるのか?」への答えは以下の通りです。
4.1.答え(1)模範解答は100回音読すれば簡単に暗記できる
100題でも200題でも暗記できる方法はあります。具体的には、数百字の模範解答でも、「1日10回音読×10日」のように音読すれば、誰でも暗記できます。
※暗記するのは「模範解答」です。「解説」は理解するだけで、暗記しません。解説まで暗記していたらきりがないからです。
同じ100回音読でも、「1日50回×2日」で一気に暗記しようとしたり、「1日5回×20日」のようにゆっくり暗記するのではなく、「1日10回×10日」が最適です。なぜなら、一気に暗記したものは一気に忘れやすく、ゆっくりだと暗記していくそばから忘れていくので、なかなか暗記できないからです。
「1日10回×10日」で長期記憶に入れられます。これは英語長文の暗記でも役立つ汎用性の高い記憶法です。英語教科書1冊の暗記も可能です。ぜひ試してみて下さい。
4.2.答え(2)論述問題集1冊の模範解答は約100時間で暗記できる
論述問題集の1問当たりの平均文字数は150~200字です。平均200字の論述が200問載っている論述問題集の場合、200字を10回音読するのに約4分、100回音読すれば暗記できますから、暗記まで1問約40分(実際にはどんどん速く読めるようになるので約30分)。10問で約5時間。200問で約100時間です。
仮に夏休みに1日2時間かけたら、8割方暗記できます(個人の記憶力や読む速さに個人差がありますから、暗記できるまでの時間にも個人差があります)。
俯瞰的知識は模範解答ごとに重複がありますから、暗記すればするほど暗記は楽に速くなります。
これで世界史の知識を再整理して暗記でき、解答に必要な文章構成力も記述力も上がるなら、やってみる価値はあるのではないでしょうか。
5.素朴な疑問(4)知識が不十分で低レベルのものしか書けない?
疑問4「論述を苦労して書いても、知識が不十分だから、低レベルのものしか書けないのではないか?」への答えは以下の通りです。
5.1.答え(1)その通り、だから最初は教科書類を参照して論述を書く
論述の勉強を始めた当初は、論述に必要な知識(俯瞰的知識)が不十分なので、まともな論述は書けません。
よって、教科書類(自分のメインの暗記本)を参照して論述を書くのが正しい勉強法です。
そうすれば、記述力を培う勉強になるだけでなく、教科書類のどういう記述が志望校の論述に出やすいかや、教科書類の重要性が分かり、教科書類暗記にもやる気が出ます。
5.2.答え(2)だから俯瞰的知識を暗記し続けるしかない
いつまでも教科書類を見ながら論述を書くわけにはいきません。本番では通用しないからです。遅くとも受験1ヶ月前には、知識面での不足はほとんど無いようにしておきたいものです。
そのためには、論述の勉強を始めても、教科書類、過去問、論述問題集で俯瞰的知識を暗記し続けるしかありません。
俯瞰的知識の暗記法についてはこちらに書いています。
6.素朴な疑問(5)論述構成法が分からない、どうしたらいい?
疑問5「論述を苦労して書いても、論述構成法が分からないから、低レベルのものしか書けない。どうたらいい?」への答えは以下の通りです。
6.1.答え(1)そう、世界史の論述構成法なんて誰も知りません!
論述構成法とは、世界史の論述で、「最初に何を書いて、次に何を書いて、最後に何を書くか」という文章構成法のことです。
世界史の論述構成法なんて、誰も知りません!
なぜなら、習ったことがないからです。また、優れた論述の模範解答を読んだこともないからです。
6.2.答え(2)論述構成法を身に付けるには、たくさん読み、暗記し、書き、添削を受ければいい
では、世界史論述で合格点を取れる構成法は、どうやって身に付けたらいいのでしょうか?
それは、「優れた論述構成法で書かれた模範解答をたくさん読み、たくさん暗記し、たくさん書き、たくさん添削を受ければいい」のです。こうすれば、論述構成法が体感として分かるようになります。
具体的には、過去問や論述問題集の模範解答を、【1日10回×10日】のように音読すれば暗記できます。
過去問10年分、論述問題集1冊分の模範解答を暗記し、その後、論述問題を書き、添削を受け、文章構成法をチェックしてもらえば、見違えるような論述が書けるようになります。
6.3.答え(3)文章構成法の理論を学ぶ
そして過去問10年分、論述問題集1冊の模範解答を暗記して、まともな論述が書けるようになってから、論述問題集に書かれた「論述構成法の書き方の理論」を読むのです。最初から読んでも覚えるべきことばかりで頭がパンクして習得できませんが、ある程度書けるようになったら、書かれていることの重要性が分かり、習得できます。
以下の論述問題集が書き方についてよく解説されています。
「世界史論述練習帳new」(中谷臣著、パレード)
「判る!解ける!書ける!世界史論述」(河合塾)
「数に当たり、その後理論を勉強する」やり方は、作文や小論文、レポートや論文の書き方習得法と同じです。
それぞれの文書により、文章構成法(型)は異なります。例えば小学生の作文には作文の型があり、小論文にはその型があり、生物学・物理学・医学の論文にはそれぞれ、その型があります。
そして、ある特定の構成法の文書を書けるようになりたいときは、理論と多読の両方から責めるのが得策です。その種の文書を読んだことも書いたこともなければ、理論だけ読んでもチンプンカンプンですが、優れた文書をたくさん読み、それを真似て30~50の文書を書けば、ある程度書き方が体感として分かるので、理論も頭に入ってきます。
ぜひ、多読と理論を実践してみてください。
7.素朴な疑問(6)解説はどこまで覚えればいいの?
疑問6「論述問題集の解説は暗記すべきか、理解するだけか?」への答えは以下の通りです。
7.1.答え(1)解説は理解するだけ。
暗記するのは「模範解答」にとどめ、解説は暗記しません。なぜなら、そこまで覚えきれないからです。まずは模範解答という「俯瞰的知識のエッセンス」を暗記していきます。
解説は模範解答を「理解」するのに必要なだけ数回読み、キーワードに印を付けます。これを復習のたびに行います。
8.終わりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんの参考になれば幸いです。
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