漢文受験勉強(3)過去問の解き方と習得法

受験勉強は2つの時期に分かれます。入試基礎力養成期入試合格力養成期です。

このページでは、漢文の大学受験における入試合格力養成期の勉強法について書いていきます。

具体的には、高校生が、入試基礎力を養成した後、塾に頼らず、できるだけ自力で、どういう教材を、どう勉強して、漢文を合格レベルまで持っていくかを書きます。

1.受験勉強の2つの時期

1.1.入試基礎力養成期

入試基礎力養成期の教材・順序・勉強法は【受験勉強(2)入試基礎力養成期の勉強法】に詳しく書いています。

1.2.入試合格力養成期

この時期には、「志望校に合格するレベルの漢文力」、言い換えれば、「共通テストで8~9割以上、難関大学~超難関大学(偏差値65~70以上)の過去問でも合格点(7割以上)を取れる漢文力」を培います。偏差値で言えば70以上を目指します。

 ※偏差値:このホームページで”偏差値”という場合、河合塾偏差値を指します。同じ偏差値でも業者によってレベルが違うので、標準的な河合塾偏差値で考えます。

 ※志望校偏差値が60~65以下の場合、入試基礎力養成期の勉強をしっかりやれば、それだけで多くの受験生が合格レベルに到達します。

入試合格力養成期に使う教材は、以下の通りです。

【入試合格力養成期の教材の全リストとその使用順序】

(1)過去問:3年8月以降(入試合格力養成期)のメイン教材は志望校過去問です。過去問を10年分以上解き、習得して、志望校レベルの実力を身に付けていきます。

(2)弱点補強用問題集:過去問を解いて分かった自分の弱点を補強するため、「読み方解き方本」、記述問題集などを、必要に応じて復習・習得します。

 これについては【受験(4)過去問弱点対策法】に書いています。

(3)志望校・共通テスト対策のための教材:スタディサプリの共通テスト対策動画等を必要に応じて見て、専門家の解き方を参考にすれば、実力向上につながります。

 これについては【受験(5)共通テスト漢文対策法】に書いています。

2.過去問を解く前提

2.1.過去問を解き始める時期

以下の受験生は、過去問を中心に解いていきます。

(1)志望校偏差値突破:入試基礎力養成期の教材を暗記し、「訓読+訳の暗記」を30~50ページ以上習得して、漢文偏差値が志望校レベルを超えた3年生、もしくは漢文偏差値が65以上になった3年生。

 ※漢文の習得:このホームページでは、既習の漢文について、「訓読+訳の暗記」をして「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにすることを漢文を習得すると表現します。詳しくは【受験勉強(2)入試基礎力養成期の勉強法】参照。

(2)通常は3年夏休み頃から:志望校偏差値に到達できなくても、夏休みになった3年生は過去問を解き始めます。

2.2.過去問を早々に解いた方が良い理由

過去問は、普通の受験生は10~12月頃から解き始めますが、創賢塾では高3の夏休み頃から解くように指導しています。その理由は以下。

(1)対策時間:過去問の傾向や自分の間違いの傾向によって、その後の勉強内容・教材を変えたり追加したりする必要があり、対策にはそれなりに時間がかかるからです。

 例えば、自分の間違いが、句法に問題があるのか、単語か、漢文常識か、記述力かによって、勉強内容を変える必要があります。

(2)習得時間:過去問は、10年分以上解き、習得した方が良いですが、例えば、週1年分解き、習得するとしたら、数ヶ月かかります。よって早めに過去問を解き始めた方が良いのです。

2.3.過去問が重要な理由

過去問が重要なのは、過去問が「自分が受験するときの問題に傾向が最も似ている問題集」だからです。

 ※過去問の傾向とは:漢文や設問の難易度・記述問題が出るかどうか・白文問題が出るかどうか等。

市販の問題集は、過去問と傾向が似ているとは全然限らないので、過去問を解く実力がある受験生が、市販の普通の問題集を、過去問より優先的に解く理由はありません。

3.過去問の解き方と習得法

3.1.勉強法

【過去問の解き方と習得法】

(1)過去問を解く

 ①制限時間で解く⇒延長して解く:まず、制限時間内で解きます。時間内に終わらなかったら、10~20分など延長して解きます。解かないのはもったいないからです。

 そして、両方、分けて点数化できるように印を付けておきます。時間内の点数が「本番であれば何点取れるか」で、延長の点数は「今の実力でどこまで解けるか」を示します。

 ②読み方:リード文(最初の人物・背景説明)や注もしっかり読み、登場人物を丸で囲み、主語や目的語の省略を補って読みます。

 読んでいて傍線部問題や穴埋め問題があれば、その都度問いを解いていきます。

 ③解き方:傍線部問題では、傍線部について、欠けている要素(主語・目的語等)を補い、指示語があれば指示内容を明らかにし、できるだけ正確に傍線部を訳し、また、前後の文(文脈)にも注意を払い、理解します。

 選択肢問題の場合、傍線部やその前後の意味がよく分からなくても、選択肢(≒正解肢は一種の訳)をヒントに本文と照らし合わせて解きます。

 このあたりの読み方・解き方は「共通テスト漢文のスゴ技」「共通テスト漢文 満点のコツ」などの「読み方・解き方本」に詳しく書かれています。過去問を読み、解くときには「読み方・解き方本」のテクニックを用い、習熟していきます。

 ④理解できない箇所に印:読んでいて意味が分からない単語・箇所・文や、主語が分からない述語に印を付けておきます(復習のため)。

(2)自己採点する

 ①自己採点:解き終わったら解答解説・訳を読み、自己採点します。

 ②問題を間違えた原因・理由を理解する:間違えた問題に印を付け、なぜその解答になるのか、自分の答えではなぜダメなのかをしっかり理解します。

 知識(句法・単語・漢文常識等)が原因なら、ルーズリーフにまとめ、暗記し、内容の理解不足が原因なら、何が原因で内容を誤解したのかを理解します。

 後日、同じ問題を解いても、正しい根拠で正解が導けるように、きちんと理解し暗記します。

(3)過去問まとめ帳を書く

 ①過去問まとめ帳:過去問を自己採点したらすぐに、点数・感想(簡単だった等)・過去問の傾向自分の間違いの傾向・今後の対策を、以下のように、ルーズリーフに「過去問まとめ帳」を書きます。「過去問まとめ帳」は過去問の全科目で作ります。

【共通テスト21年、漢文 傾向|「韓非子」、6問中3問不正解(原因:語句の意味1、白文問題1,内容理解1)、問4に白文問題がある、文章・問題とも難しめ。分からない単語10個】

【 〃 〃 対策|語彙力不足⇒句法問題集で用語暗記の復習、白文問題⇒「読み方・解き方本」を復習する、(2つの文章が出る)共通テスト用問題形式に慣れる必要がある⇒共通テスト用問題集を2週に1問解く】

 ②過去問の傾向とは:作品名・時代、漢詩の有無、難易度、語彙問題・選択肢問題・記述問題等の問題の種類等。

 ③自分の間違いの傾向:点数、どういう問題で間違えたか、意味が分からなくなった原因or間違えた原因(漢詩の読み取り・単語・句法・訓読・白文問題・漢文常識)等。

(4)過去問を習得する

 ①習得する:過去問は解きっぱなしではなく、習得します。習得すれば実力が上がり、得点率が上がるからであり、逆に、習得しなければ実力が上がらず、得点率もほとんど上がらないからです。

 過去問の習得とは以下の4つを指します。

 ②習得1:「訓読+訳の暗記」:習得法は【勉強法(3)漢文長文習得法】参照。

 ③習得2:暗記:問題に関わる、知らなかった知識(単語・漢文常識など)を全部ルーズリーフにまとめ、暗記します。

 ④習得3:長期記憶に入れる:上記2つの習得後、その復習を2ヶ月以上続け、長期記憶(数ヶ月~数年以上もつ記憶)に入れていきます。詳しくは【勉強法(3)漢文長文習得法】参照。

 ⑤習得4:3回以上解く:何度も解くことで、入試問題の読み方、解き方に慣れていきます。特に、記述問題は、何度も書くことで、記述力が上がります。

 2回目以降に解くときは、どこで・なぜ文の意味が分からなくなるか-主語か句法か内容かなど-をチェックしながら読みます。

 問題が解けない・間違えた場合は、解いた後で、何が原因で問題が解けないかを考え、原因に当たる本文に印を付け、それを解決する勉強(白文問題対策・単語の暗記等)をします。

創賢塾のホームページに書かれた勉強法をいち早く習得したい高校生のために【5教科のテスト勉強法を習得する3ヶ月集中オンラインセミナー】【長期勉強法コース】を開講しています。【高校生用:講座・セミナー一覧】はこちら。関心ある方はご参照ください。

3.2.漢文習得の重要性

「句法+必須知識」の暗記の後の漢文の勉強のメインは、入試まで、「訓読+訳の暗記」(漢文の習得)です

なぜなら、「訓読できて訳せる」漢文の量が増えるほど、実力が上がり、初見の漢文でも「訓読できて訳せる」部分が増え、そうすれば、(白文問題以外の)たいていの問題は解けるようになるからです。

 ※白文問題を解けるようにするには、「読み方・解き方本」で専用の対策をする必要があります。勉強法は【勉強法(4)白文攻略法】参照。

よって、普段から、学校の漢文、・漢文問題集・「読み方・解き方本」等で、「訓読+訳の暗記」を毎週合計0.5~1ページ以上進め、その復習も毎週行っていきます。

過去問学習を始めてからは、過去問を中心に漢文の習得をします。過去問を習得すれば、過去問レベルの漢文を「訓読でき、訳せる」能力を培えるからです。

4.過去問を集める

4.1.共通テストを受ける場合

過去問の前に、できるだけ、共通テスト用の「読み方・解き方本」である以下のどちらかを習得します。

共通テスト漢文 満点のコツ」(教学社)
最短10時間で9割とれる 共通テスト漢文のスゴ技」(角川)

その後、共通テスト過去問、共通テスト用問題集の順に解いていきます。

共通テスト 赤本」(教学社)
共通テスト実戦模試(5)国語」(Z会)
共通テスト総合問題集 国語」(河合塾)
共通テスト実戦問題集 国語」(駿台)
共通テスト 古文・漢文 実戦対策問題集」(旺文社)

4.2.二次に漢文がある国公立大学が第一志望の場合

第一志望の国公立大学の過去問を10年分以上、受験する私立大学の過去問を各5年分以上集めます。

8~10月は共通テスト・国公立大学の過去問を中心に解き、11月以降、私立大学過去問も少しずつ入れていきます。

4.3.漢文がある私立大学が第一志望の場合

受験する私立大学の過去問を各5~10年分以上集め、週1つなど解いていきます。

4.4.過去問の選択

(1)共通テストを受ける受験生

 入試基礎力養成期の教材を習得し、「訓読+訳の暗記」を30~50ページ以上終えていれば、共通テスト過去問も結構解けるはずなので、【「読み方・解き方本」⇒共通テスト過去問】の順で問題演習に入ります。

 二次に漢文がある国公立大学受験生の場合、その後、二次の過去問を解きます。

 共通テストを受ける中堅以下(偏差値60以下)の私立大学志望者は、【「読み方・解き方本」⇒共通テスト過去問+志望大学過去問】の順で解きます。

 共通テストを受ける(偏差値60以上の)難関私立大学志望者は、【「読み方・解き方本」⇒共通テスト過去問⇒志望大学過去問】の順で解きます。

(2)共通テストを受けない私立大志望者

 中堅以下の私立大学志望者は、【「読み方解き方本」⇒志望大学過去問】の順で解きます。

 難関私立大学志望者は、【「読み方解き方本」⇒共通テスト過去問+中堅私立大学用問題集⇒志望大学過去問】の順で解きます。いきなり難しい難関大過去問を解く前に、共通テスト過去問のようなミドルレベルの問題を10~20問解き、習得してから難関大過去問に入るのが得策です。

 「読み方解き方本」のオススメは以下です。

共通テスト漢文 満点のコツ」(教学社)
最短10時間で9割とれる 共通テスト漢文のスゴ技」(角川)
岡本梨奈の 1冊読むだけで漢文の読み方&解き方が面白いほど身につく本」(角川)

5.過去問について

5.1.国語一年分全体を解くか、大問ごとに解いても良いのか。

過去問は、国語1年分を全体で解いた方がもちろん良いですが、時間もかかりますし、それぞれの科目(現代文・古文・漢文)の進み具合も違うので、必ずしも全体を一気に解く必要はありません。

ただ、時間管理を学ぶため、10月以降、1ヶ月に1回くらいは国語1年分を全問、時間通り解くのがオススメです。

 ※時間管理:最後まで到達し、解ける問題を全部解き、全体の点数を最大化するため、どういう順番で解くか、各大問に何分かけるか、解けない小問を最大何分くらい考えるか、などを検討し、決めていくこと。

5.2.過去問に関する誤解

「過去問の問題文(漢文)は二度とその入試に出ないのだから、過去問を解き、習得するのは無駄だ」と考える受験生がいます。

しかし、それは間違いです。

なぜなら、同じ問題文が出る確率は、過去問(ほぼ0%)と他の問題集(ほぼ0%)でほとんど差は無いからです。また、過去問を解けば、入試問題の傾向に慣れることができ、習得することで入試レベルの実力を培うことができるからです。

ですから、問題文や問いの傾向が「自分が受験するときの志望校の問題」に最も似ている過去問を重視するのは当然です。

6.最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

合格したかったら、過去問をガンガン解き、習得しましょう。

あなたの健闘を祈ります。

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