日本史の論述対策(3)核心勉強法

【日本史の論述対策】シリーズでは、2次試験に日本史の論述問題がある国公立大志望の受験生を対象に、共通テスト、論述問題で合格点を取るための暗記戦略について書いています。

このページは、論述問題対策の核心となる勉強法についてです。

論述問題がある難関私立大志望生にも、このページの内容は役立つでしょう。

1.論述問題の壁

1.1.論述問題対策の前提

通常、共通テストで8割以上取れる知識がないと論述は書けませんので、過去問や共通テスト対策問題集で8割以上取れるようになってから、論述問題対策を始めます。

共通テストで8割以上取れるようにする勉強法は【論述問題対策(1)通史暗記】参照。

1.2.論述問題はみんな苦手

論述問題対策として、普通は、「過去問や論述問題集の論述問題を解き、模範解答と解説を読んで理解し、次へ。」のように勉強していると思います。

しかし、このように次々と解いていっても、自分が合格レベルの論述解答を書けるようになるのか、自信は無いでしょうし、実際、過去問5~10年分、論述問題集1冊をこのように勉強して終えても、新規の問題はおろか、既習の問題も書けるようにはならないでしょう。

「論述問題を得意とする者はほとんどいない。」

駿台日本史講師・池知正昭

日本史の全体的な知識としては申し分ない受験生でも、論述問題を得意とする者はほとんどいない。

珍妙な解答の山

「判る!解ける!書ける!世界史論述」(河合塾、10ページ)より

河合塾が実施する「東大即応オープン」「京大即応オープン」「一橋大入試オープン」などの模試で論述問題を採点する時、私たちが遭遇するのは、珍妙な解答の山である

前後関係が逆であったり、因果関係が逆であったり、異なる時代と地域の事項が一文のなかで混在していたり、細かな事項や人名が、題意とは関係なくただ羅列してあったりなどなど。

1.3.論述問題の壁

論述問題が書けない人が合格答案を書けるようになるまでに克服すべき壁は3つあります。

【論述問題の3つの壁とその克服法】

(1)知識の壁

 ①論述問題で必要な知識とは:重要歴史用語の意味の知識と歴史の流れの知識・俯瞰的知識です。

 ※重要歴史用語の意味:例えば「憲法十七条」であれば、成立年、制定者、内容、時代背景、目的などのこと。

 ※歴史の流れとは:政治・経済・文化等の特定の重要テーマに関する「時代背景・原因・理由・目的・因果関係・主要人物・経過・結果・後代への影響」などのこと。

 ※俯瞰的知識とは:「歴史の流れプラス、政治・経済・文化等の特定のテーマに関する特徴・比較・意義」のことです。つまり、歴史を大きな視点で整理した内容を指します。論述問題では、主に、俯瞰的知識が問われます。

 これらは、一問一答問題集や穴埋め問題集で用語を暗記するだけではなかなか身に付きません。

 ②克服法:ではどのように勉強すれば論述に必要なこれらの知識を身に付けられるかというと、以下の勉強が役立ちます。詳細は後述。

 ・過去問を10年分以上解いて解説を理解し、模範解答を暗記する。
 ・論述問題集1~2冊(100~200問)以上を解いて模範解答を暗記する。
 ・歴史の流れ・俯瞰的知識の観点から教科書を10周以上読み、暗記する。
 ・教科書を読む際、重要歴史用語の意味や歴史の流れ・俯瞰的知識を言い、言えなければ日本史まとめ帳にまとめるなどして暗記する。

(2)読解力の壁

 ①日本史の論述問題に必要な読解力とは:論述問題には様々な問題がありますが、単純な歴史用語の意味の問題を除いて、資料・史料・課題文等を読んで、設問のテーマと出題意図を理解し、設問の指示に応じた内容を書く必要があります。

 ここで必要なのが読解力(資料・史料・課題文、設問のテーマと出題意図を読み取る能力)です。

 ②克服法:読解力を培うには、以下の勉強が役立ちます。詳細は後述。

 ・現代文の長文問題を解く、小論文・要約を書く等、国語力を培う勉強をする。
 ・自分の書いた論述をテーマや出題意図の観点から添削してもらう。
 ・論述を書いた後、解説を読み、テーマや出題意図を正しく読み取っていたかを確認する。

(3)論述力の壁

 ①日本史論述で必要な論述力とは:問題に応じた文章構成で書く能力、正しく分かりやすい日本語で書く記述力のことです。

 ②克服法:以下の勉強が役立ちます。詳細は後述。

 ・現代文の記述問題を解く、小論文・意見文を定期的に書き、添削してもらう。
 ・自分の書いた論述を、文章構成の観点から添削してもらう。
 ・添削してもらった後、清書し、それを暗記する。
 ・論述問題の模範解答をできる限り多く暗記する。
 ・論述問題を解くとき、教科書の記述を援用して書く。

2.論述問題対策の中心的教材

論述問題対策の中心的教材は、志望校過去問教科書です。

志望校過去問と教科書が重要な理由は以下。

【論述問題対策の中心的教材】

(1)志望校過去問が重要な理由

 ①傾向を知るため:各大学・学部により、論述問題には明確な傾向があり、傾向は、志望校過去問を5~10年分以上解き、解答解説を読み、自己採点・自己添削し、また書き直し、清書し、という勉強過程を通じて、自分自身で明確に分かってきます。

 ※傾向とは:問題形式、資料・史料・統計の有無、問われやすい内容・分野・テーマ・時代、字数等。

 ②最も傾向が近い問題集は過去問だから:過去問は、どの論述問題集より、自分が受ける入試問題に最も傾向が近い問題集です。よって、他の論述問題集より、過去問を解くべきなのです。

 ③対策を立てられるようになるから:志望校過去問を5~10年分以上解き、毎回、過去問の傾向と対策過去問まとめ帳に書くことで、傾向に応じた対策をとることが可能になります。

 つまり、傾向が分かることで、次に出やすい時代・テーマを推測し、それを教科書を読むときに重点的に覚えていったり、論述問題集を解く時に優先的に解いていくなど、対策をすることができます。

 ④繰り返し出るから:自分の受験時に過去問と全く同じ問題は出ないでしょうが、東大や一橋大の日本史論述をはじめ、同じテーマ・似たテーマで、別の角度から問われたり、関連事項が問われる問題は、繰り返し出ています。

 よって、過去問の模範解答や関連知識を覚えることが、最善の志望校対策になります。

 ⑤論述構成法を身に付けられるから:問題形式に応じた書き方(論述構成法)があり、それは過去問の問題を「10年分×3回以上」解き、解説を読み込み、模範解答を覚えることで習得できます。

 ※論述構成法とは:最初に何を書き、次に何を書き、最後に何を書くかの文章構成法のこと。

 ⑥論述問題集も必要:志望校過去問の量は限られていますし、過去問だけで出そうな問題全てを網羅できませんから、手に入るだけ全ての過去問を解き終わったら、もちろん、論述問題集も使います。

 その際は、過去問の傾向に似た問題集を探し、解いていきます。

(2)教科書が重要な理由

 ①出典だから:教科書は、共通テスト、国公立大学2次試験の論述問題の出典で、教科書の内容さえ理解し暗記していれば、合格レベルの論述問題は書けます。

 ②宝庫だから:教科書は、論述でそのまま使えるフレーズ・言い回し・文章の宝庫です。よって、入試までに教科書を10周以上読んで、8割以上頭に入れます。

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「一橋大学の日本史には頻出テーマがある」

一橋大学の日本史の論述の対策&記述の勉強法

一橋大学の日本史には頻出のテーマがあります。 例えば産業革命や松平定信についてなど、数年おきに出題があります。

一橋の日本史の勉強を始める際には、まず自分で過去30年くらいの出題テーマを確認してみると良いです。 すると明らかな出題範囲の偏りが分かると思います。 一橋大学では同じテーマを大雑把ではありますが周期的に繰り返す特徴があります。

「東大日本史は過去問と同じ題材を違う切り口で問う問題が非常に多い」

東大日本史の傾向と勉強法

過去問ですが何周もすることをオススメします。東大日本史は過去問と同じ題材を違う切り口で問うという問題が非常に多いので過去問は暗記するレベルでやりましょう。

3.論述問題対策の核心

では、どのように志望校過去問と教科書を使っていったら合格レベルの論述答案を書けるようになるのでしょうか。それには以下の5つの対策が有効です。

【論述問題対策の核心】

(1)模範解答を暗記する

 ①正しい論述問題活用法:過去問と論述問題集の論述問題をどう使えば良いのかというと、「問題を解き、解説を理解し、模範解答を暗記する」のです。

 どのくらいの数を覚えるのかというと、100以上、できれば200以上の論述問題の模範解答を、しっかり理解した上で暗記します。

 ②自分の論述:自分の論述を自己添削した内容、もしくは先生に添削してもらった内容に自信があれば、暗記するのはそれらでも構いません。

 むしろ自分が書いた内容の方が暗記しやすいので、オススメです。

 ③覚え方:【1日10回音読×10日】で丸暗記できます。

 ④暗記するメリット1:知識が増えて論述が書けるようになる:200以上覚えれば、入試に出やすいテーマの多くについて、重要歴史用語の意味や歴史の流れの知識を覚えられ、論述が書けるようになります。

 ⑤暗記するメリット2:傾向と対策が分かる:暗記する過程で、過去問の傾向が身を以てわかり、対策も立てやすくなります。

 ※傾向とは:問題形式、資料・史料・統計の有無、問われやすい内容・分野・テーマ・時代、字数等。

 ⑥暗記するメリット3:論述構成力が上がる:大多数の受験生は、たとえ通史暗記が一通り終わり、共通テスト過去問で8割以上取れるようになっていても、論述構成力が不十分なので、まともな論述答案が書けません。

 ※論述構成力とは:最初に何を書き、次に何を書き、最後に何を書くかの文章構成力のこと。

 論述構成法を最短で習得するには、「模範解答を何度も読む、覚える、書き写す」ことが有効です。論述問題の模範解答を100~200以上暗記すれば、書き方が分かってきます。

(2)同じ問題を3回解く

 ①論述力養成:東大日本史論述のような、知識より、設問の理解・歴史の流れの理解が重要な論述問題では特にそうですが、過去問や過去問に似た論述問題を、3回以上解くことは重要です。

 設問を理解し、知識を整理し、分かりやすく論理的な日本語で書く、そして自己添削し、書き直す、というプロセスを通して、論述力は上がっていくからです。

 模範解答を暗記して知識があっても、論述をスムーズに書けるとは全然限りません。何度も書いて論述力を上げていきます

 ②3回解く:1回目に論述を書き、模範解答を暗記した後、同じ問題を、1週間後、2週間後など、3回前後解きます。

(3)添削してもらう

 ①添削が重要な理由:自分では気づかない文章構成上の欠陥、日本語のミス、言葉・歴史用語の使い方の間違い、設問にきちんと答えていない間違いなどをチェックしてもらえますから、添削してもらうことは重要です。

 ②添削は暗記してから:添削を受けるのは100~200以上の模範解答を暗記してからにしましょう。

 なぜなら、その前に添削を受けても、低レベルの論述しか書けず、添削を受けてもあまり意味がないからです。時期的には9~10月からでしょう。

 ③添削の利用法:学校や塾、予備校の先生に週1回など添削を受け、書き直し、2回目の添削を受ける、そして最終的に出来上がった自分の解答を暗記する、というふうにするのがオススメです。

 ④推敲する:先生に見せる論述は、自分でできる限り推敲し、内容・文章構成とも、ある程度自信があるまで完成度を高めます。

 自力でまともな答案が書けない場合は、教科書を参照して書き、更に、提出する前に2~3回推敲して、自分なりに自信がある答案に仕上げます。その過程で論述力が上がり、知識も増えます。

(4)教科書を10周以上読んで覚える

 ①十分な準備:過去問10~20年分以上の論述問題と論述問題集の模範解答を、合計100~200以上覚えれば、過去問の傾向は分かるし、論述問題に出やすい重要知識も暗記でき、どう書けば良いかもある程度分かってきます。

 ただ、それで知識は十分かというとそうではありません。

 ではどうすれば十分な準備ができるかというと、教科書の重要テーマの歴史の流れ・俯瞰的知識と、重要歴史用語の意味を全て言えるまで、教科書を10~20周以上読み込むのです。そうすれば、たいていの論述問題を書けるだけの知識を暗記できます。

 ②具体的勉強法1:週1周くらいのペースで教科書を黙読し、合計10~20周以上読みます。もしくは、2~3週間に1周くらいのペースで教科書を音読し、合計10周以上読みます。

 読むときは、ただ漫然と読むのではなく、重要歴史用語の意味、歴史の流れ・俯瞰的知識を考えながら読みます。

 ③具体的勉強法2:歴史の流れと俯瞰的知識を言う:10周以上読んでほぼ暗記したと思ったら、1ページに1つくらいの、重要テーマ(戦争・政変等)や重要歴史用語(重要人物・法令・政策名等)について、その歴史の流れ・俯瞰的知識・意味を言ってみます(自分に説明します)。

 そして言えなければ、それらに相当する部分に下線を引き、10回ほど音読していったん暗記します。

(5)教科書の歴史の流れ・俯瞰的知識・重要用語の意味をまとめる

 ①日本史まとめ帳:過去問を10年分以上解いて傾向がある程度分かったら、教科書を読むときに、志望校過去問に出やすい重要テーマや重要用語で、流れや俯瞰的知識、意味を言えないものがあったときに、それを、以下のように、ルーズリーフの日本史まとめ帳に一問一答式でまとめ、暗記します。

【荘園の意味と流れ|荘園とは、古代、中世における土地支配の一形態である。成立事情からみて、(1) 8~ 9世紀に、中央権力者が律令支配体制の下で形成した初期荘園(中世荘園)と、(2)11世紀以後、地方豪族らが中央権力者と結合して成立した寄進地系荘園(領域型荘園)とに分けられる。……】

 ②有効な理由:教科書にしても論述問題の解答にしても、結局は他人が書いた文章で、他人が書いた文章より自分が考えてまとめた文章の方が遙かに暗記しやすいので、自分でまとめるのが有効なのです。

 ただし、自分でまとめるのは時間がかかりますから、過去問や論述問題集の模範解答の暗記を優先します。

日本史・世界史二次試験論述対策は丸暗記するくらい読むこと

白黒熊さん(東京大学法学部生)

とにかく過去問を見て、解答を読み込みます。特に、論述の解答は丸暗記してしまうくらい、繰り返し読んでください

「丸暗記してしまうくらい」というのは曖昧ですね。「丸暗記」してしまいましょう。

4.終わりに

ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

皆さんが日本史論述を得意にするのに、この記事が参考になれば幸いです。

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