このページでは英文の「論理的な読み方+要約」の優れた問題集である「ディスコースマーカー英文読解」(Z会)の習得法について書いていきます。
1.「ディスコースマーカー英文読解」
1.1.「ディスコースマーカー英文読解」とは
「ディスコースマーカー英文読解」は、英文の「論理的な読み方+要約」の代表的な問題集です。
ディスコースマーカーとは、英文を読むときの話の流れの指標となる「標識語・接続語」のことです。
例えば、逆接を示すディスコースマーカーには以下のようなものがあります。
but / however / yet(しかし), although / though / even though / while ~(~だが), in spite of A (Aにもかかわらず), nonetheless / nevertheless / even so / Still / all the same(それにもかかわらず) etc.
逆接のディスコースマーカーが重要なのは、これの前より後の方が重要で、後がキーセンテンスの可能性が高いからです。
このようなことを理解し暗記すれば、英文の重要部分とそうでない部分が区別でき、内容がより深く理解できます。
ディスコースマーカーを含めた論理的な読み方・要約の仕方を理解し、覚え、使えるようにすることで、論理的に読み、要約を書けるようにするのが、「ディスコースマーカー英文読解」を勉強する目的になります。
1.2.「ディスコースマーカー英文読解」に取り組むべき高校生
「ディスコースマーカー英文読解」で「英文の論理的な読み方+要約」を習得すべき高校生は、(河合塾)偏差値65以上で、志望校に要約や意見型の自由英作文、1000ワード以上の超長文が出る人です。
偏差値65を超えると成績は上がりにくくなりますが、その打開策の1つが「ディスコースマーカー英文読解」のような「論理的読解法(ディスコースマーカーやパラグラフ・リーディングを使って論理的に読む方法)」の問題集の習得です。
現代文と同じで、論理的に読めるようになれば、速く、深く読めるようになり、また、重要部分(キーワードとキーセンテンス・主張)に適切に印を付けられるようになれば、重要部分が問いの答えや根拠になることが多いので、問題の正解率も上がります。
偏差値65未満の人は、「論理的な読み方」を習得する前に、なすべきことがたくさんあります。それは、英単語集2冊、英熟語集1冊、英文法問題集1冊、英文解釈書2冊、英語長文教科書等です。偏差値65未満の人は先ずこれらの教材を暗記・習得し、偏差値が65を超えたら「ディスコースマーカー英文読解」に取りかかりましょう。
1.3.「論理的な読み方」とは
英語の論理的文章(評論文や説明文)には「論理的な書き方」の規則があり、それを学び、理解し、記憶することで、論理的に読めるようになります。
英語の「論理的な書き方の規則」とは、「1段落1話題1主張」「話題は通常、段落の最初にある」「英文全体の話題は第1段落の冒頭にあることが多い」「主張は段落の冒頭か最後にあることが多い」「主張・まとめ・結論・逆接・強調を示すディスコースマーカーを書く」「文と文との論理関係には言い換え(イコールの関係)、因果関係、逆接、対比・対立、譲歩(予想される反論とそれへの反駁)、進展(次の話題に移る:ところで)などがある」等です。
これらを利用し、キーワード・キーセンテンス・主張を探しながら読み、適切に印を付けられれば、速読でき、内容をより深く理解でき、要点を記憶でき、その結果、要約を素早く適切に書けるだけでなく、他の英語長文問題も格段に解きやすくなります。
2.「ディスコースマーカー英文読解」を習得する
2.1.習得目標
(1)論理的な読み方の習得
(2)要約の書き方の習得
(3)主要ディスコースマーカーの暗記
(4)英文の習得
2.2.全体の学習計画
【全体1周目:1章5周⇒2~5章3周ずつ】⇒【全体2周目(各章2周ずつ)】⇒【全体3周目(各章1周ずつ)】
「ディスコースマーカー英文読解」の全5パート22問のうち1パートずつ習得していきます。
第1パート(5問60ページ)には、「要約の書き方と論理的な読み方」、英語の論理展開法、ディスコースマーカーが詳述されており、この本の核心というべき部分なので、第1パートをまずは5周ほど繰り返して習得します。
具体的には、例えば、土日各1時間、毎日30分使える場合、第1パートを2日で1問など進め、2週間で1周目を終え、5週間で5周して、すぐに第2パートに入ります。第2パート以降は3周ずつ勉強します。第1パートが最重要なため多めにするのがオススメです。
長文20問以上の問題集の全体を1周して2周目に入る、というやり方だと、量が多すぎて覚えきれず、また疲れるので、4~5パートに分割するのがオススメです。
2.3.英文をコピーして要約を書く
英文をコピーする理由は、要約は3~5周する必要があり、本冊子にキーワード・キーセンテンス、日本語のメモを書くと、2回目以降やりにくくなるためです。
2.4.「ディスコースマーカー英文読解」の習得法
【「ディスコースマーカー英文読解」の習得法】
(1)第1パートの1周目:英語要約・日本語要約・論理展開分析を書く
①キーワードとキーセンテンスに印を付ける:英文をコピーし、読みながら、キーワードを丸で囲み、キーセンテンスを<>で囲み、要約に入れるべき最重要だと思う箇所については日本語でメモを書きます。
意味が分からない英単語熟語は意味を推測し、それでも分からなければ語句解説や辞書を引いて構いません。また、文法的に分からない箇所も、分からなければ構文解説や英文法参考書を参照して構いません。要約を書くのが目的で、英単語熟語・文法が分かっても要約を書けるとは限らないからです。
キーワードとキーセンテンスの見つけ方は【英語要約を書けるようにする方法】やこの本に書いています。
②英語要約を書く:読み終わったら、キーワードとキーセンテンスに優先順位を付け、最重要なものから要約に入れていき、本文の論理の流れを崩さず、本文の意味を変えず、文法的に正しく、日本語として意味が通じるように、分かりやすく、字数以内におさめて書きます。
③日本語要約を書く:時間的に可能なら、次に、全文訳の日本語を要約します。日本語要約の方が易しいので、相乗効果で論理展開把握力、英語要約も、より速く上達します。
具体的には、全文訳をコピーして、キーワードとキーセンテンスに印を付けながら読みます。読み終わったら、キーワードとキーセンテンスを順位付けし、最重要なものから要約に入れていき、本文の論理の流れを崩さず、本文の意味を変えず、文法的に正しく、日本語として意味が通じるように、分かりやすく書き、最後に字数に収まるようにまとめます。
④論理展開分析を行う:「ディスコースマーカー英文読解」には全英文に「論理展開図」が載っています。これは本文のどの部分がどういう役割をしているかを書いたものです。それを自力で書きます。
例えば、本文に「第1段落:話題⇒説明⇒対比(第一の立場)⇒結論」「第2段落:対比(第二の立場)⇒説明⇒言い換え⇒理由⇒結論」などと書いていき、解答解説を読む際、それと冊子の論理展開図を比較し、訂正し、理解します。
これを要約時に毎回行い、20~30英文で行うと、英語の論理展開のパターンが明確に理解でき、論理的読解力、ディスコースマーカーが身につき、要約も飛躍的に上達します。
(2)第1パートの1周目:解答解説を読み、英語要約・日本語要約・論理展開分析を添削する
①解答解説を読む:知らなかった知識・重要な内容にはマーカーを引き、2周目以降はそこを中心に読み、暗記していきます。また、英文の論理構成・要約の仕方・英文の意味を理解します。
②英語要約を自己採点する:要約の得点はキーワードとキーセンテンス(要約に入れるべきワード・フレーズ・文)の数で決まります。模範解答に入っているキーワードとキーセンテンスを探し印を付け、それが自分の回答にどれだけ入っているかを調べ、点数化します。
例えば、模範解答にキーワードが6つ、キーセンテンスが2つあり、そのうち、自分の回答にキーワードが3つ、キーセンテンスが1つの場合、10点中5点、などと考えます。
③英語要約を自己添削する:不可欠なキーワードとキーセンテンスが入っているか、本文の論理の流れを崩さず、本文の意味を変えず、文法的に正しく、日本語として意味が通じるように、分かりやすく書かれているか、字数に収まっているかをチェックし、添削します。
④重要性を検討する:次に、どうしてそれらのキーワードとキーセンテンスが重要かを考えます。ディスコースマーカーや内容からしっかり検討します。
どうしてそれらが重要か分からなければ、自分で要約は書けないので、ここは非常に大切です。分からなければ学校や塾の先生に聞きましょう。
⑤日本語要約を自己採点する:英語要約の自己採点と同様、印を付けた模範解答のキーワードとキーセンテンスと、自分の要約文のそれらを比較し、どれだけ入っているかを調べ、点数化します。
⑥日本語要約を自己添削する:不可欠なキーワードとキーセンテンスが入っているか、本文の論理の流れを崩さず、本文の意味を変えず、文法的に正しく、日本語として意味が通じるように、分かりやすく書かれているか、字数に収まっているかをチェックし、添削します。
⑦論理展開分析を添削する:冊子の「論理展開図」と自分の書いたものを比較し、内容が違っていれば添削し、理解します。
⑧英文を文法的に完全に理解する:意味が分からなかった英単語熟語・文法・構文等に印を付け、英文を文法的に完全に理解します。
(3)第1パートの2周目
①英語要約・日本語要約・論理展開分析を書き、解答解説・全文訳を読み、自己採点・添削する:ここは1周目と同じです。
②暗記事項をまとめ、暗記する:暗記事項(論理構成のパターンやディスコースマーカー、英単語熟語等)を、以下のようにルーズリーフにまとめて暗記します。
暗記してから3周目に入ります。
【パラグラフとトピックの3つの関係|第一パラグラフに文章全体のトピックがくる、1パラグラフ1トピック、トピックは通常パラグラフの冒頭にある】
(4)第1パートの3~5周目:「要約の書き方と論理的な読み方」を習得するまで第1パートを5周前後復習する
暗記した論理構成のパターンやディスコースマーカーを使って要約を書きます。
英文の文章構成をスラスラ言えて、要約がサラサラと書けるまで第1パートを5周前後解き、習得できたら第2パートに進みます。
(5)第2~5パート
やることは第1パートと同じで、キーワードとキーセンテンスに印を付け、英語要約・日本語要約・論理展開分析を書き、解答解説・全文訳を読み、自己採点・添削します。2周目には暗記事項をまとめ、暗記してから3周目に入ります。
時間があり、必要性が高いなら、全体の2周目に入ります。
(6)英文を習得する
要約を書くのと平行して、英文自体を習得し、長期記憶に入れるために2ヶ月以上復習します。
【習得:「英文をスラッシュ訳で1日3回口頭和訳する⇒スラッシュ訳を思い浮かべながら1日5回音読する」×7日】
【復習:1日15分(1回和訳+5回音読)×週2回×2ヶ月以上】
2.5.全部の要約を書き、習得する必要はない
「ディスコースマーカー英文読解」は英文も難しく、問題量も多いので、全部を要約・習得しようと思ったら、3~6ヶ月以上かかります。
全部やらないと要約が上達しない、論理構造を習得できないわけではないので、1パートつずつ要約を書き、習得していけば良いです。
第1パート(5問)を5周するだけでも全然違います。
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3.英文の習得法と長期記憶に入れる復習法
3.1.英文を習得する
英語長文を得意にするには、英文の理解度・読むスピードを上げる必要がありますが、それは英語長文を多数「習得する」ことで可能になります。
(1)英文を「習得する」とは:「英文をスラッシュ訳でスラスラ和訳できる+90%の理解度で分速150ワード以上で音読・黙読できる」ようにすること。
(2)「スラッシュ訳」とは:3~5ワード前後の意味のまとまりごとに、前から前から訳していく方法。これにより、返り読みせずに英文を読むことができ、速読・速聴が可能になります。
(3)「90%の理解度」とは:「英文としてはほぼ完全に理解できる状態」。
「100%の理解度=日本語訳を読んだときの理解度」「60%の理解度=英文を読んで理解に時間がかかったり、理解できない部分が20%ほどある状態」などと考えます。
(4)「分速150ワード以上」とは:300ワードの英文なら2分以内で読める速度です。既習の英文を分速150ワード以上で読めるようにすれば、速読が可能になります。
3.2.【90%の理解度にする音読法】
【「英文をスラッシュ訳で1日3回口頭和訳する⇒スラッシュ訳を頭の中で言いながら1日5回音読する」×7日】
90%の理解度で音読できるようにするには、「スラッシュ訳を頭の中ではっきり言いながら音読する」ことが不可欠です。自分が読んでいる箇所の日本語訳を頭の中でスラスラ言えて初めて、英語が「ほぼ完全に理解」できます。
日本人が「英語を理解する」とき、初めから「英語を英語のまま理解する」ことはできません。最初は「英語を日本語で理解する」しかありません。その方法が「(日本語訳をボヤーっと思い浮かべるのではなく)スラッシュ訳を頭の中ではっきり言う」ことです。
同じ英文を上記のように理解しながら30回ほど音読すると、90%の理解度で音読できるようになり、更に100~200回以上音読・黙読していくと、だんだん「英語を英語のまま理解する」ことができるようになります。
英語のまま理解できる英文を増やすことが、速読のための究極の勉強法です。
3.3.和訳・音読の回数の目安:【英文をスラスラ和訳できる+90%の理解度で分速150ワードで音読・黙読できるまでの回数】
「1日5回音読」などの回数は目安です。英文難易度、自分の英語力などにより適正回数は変わります。難しい英文なら50回かかるかもしれませんし、簡単な英文なら20回で90%の理解度に達するかもしれません。
「英文をスラスラ和訳できる+90%の理解度で分速150ワードで音読・黙読できる」状態になるまで「和訳+音読」を続けます。
3.4.長期記憶に入れるために2ヶ月以上復習する
【復習:1日15分(1回和訳+5回音読程度)×週2回×2ヶ月以上】
例えば、「ディスコースマーカー英文読解」の英文を週2文章ずつ音読し習得した場合、22英文なので11週間(3ヶ月弱)かかります。10週間目は以下のように勉強します。
【第1~18文章の復習:1英文15分×週2回×18英文(9時間)】+【第19~20文章の「和訳+音読」:毎日30分×7日=3.5時間】=合計週12.5時間。
同じ英文を何週間も復習するので、復習時間は実際には9時間もかからず、4~5時間で済むはずです。
こうして2ヶ月ほど復習すると長期記憶に入り、数ヶ月~数年以上持つ記憶になり、入試でその知識が使えます。
3.5.毎週500ワードの英文を「習得」し、長期記憶に入れる
これは「ディスコースマーカー英文読解」から離れた話になりますが、英語長文読解力・速読力を伸ばすには、英単語熟語の暗記を進め、「スラスラ読める英文の数を増やし、長期記憶に入れる」ことに尽きます。
それは、スラスラ読める英文の数が30英文、50英文、100英文と増えれば、模試や入試などの初見の英文の中に入っている「英単語熟語・文法・構文」の共通する量が加速度的に増えて、初見の英文でも即理解できる部分が増えるからです。
そのために、学習した英文を、週500ワードずつ習得し、それを2ヶ月以上復習し長期記憶に入れます。1年間で「50英文×500ワード」、2年間で「100英文×500ワード」も習得すれば、大学受験レベルの英文なら毎日500ワードの英文1つ(1時間)でも習得が可能なくらい、英語力が上がります。
多くの高校生は、英語長文教科書さえ、いったんスラスラ読めるようにすることをやっていませんが、それで初見の入試の英語長文をある程度スラスラ読めるようになるわけがありません。勉強方法を変えましょう。
3.6.ルーズリーフに習得した英文リストを書き、計画的に復習する
毎週500ワード分を増やしていくと、数ヶ月も経つと、10英文以上になり、だんだん復習を自分の頭だけでは管理しきれなくなります。
よって、習得した英文をルーズリーフにリスト化し、以下のように日付、回数などを書いて管理します。その日どの英文を復習すべきかが、ルーズリーフの日付を見れば一目瞭然になります。
【「ディスコースマーカー英文読解」1(約200ワード)|7/10~20、音読30回習得、英単語熟語暗記、7/25音読5回で維持OK、……】
【終わりに】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。「ディスコースマーカー英文読解」の習得法は以上の通りです。
この文章が皆さんのお役に立てれば幸いです。
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