「漢文句形とキーワード」習得法

このページでは、難関大志望者にお勧めの句法問題集である漢文句形とキーワード」(Z会)の習得法をご紹介します。

1.特徴と習得順序

1.1.特徴

漢文句形とキーワード」の特徴】

(1)句法暗記:必要十分な数の句法(句形)が習得できます。

(2)重要単語:通常の句法問題集には100~200程度の重要単語が載っていますが、本書には400以上の重要単語が載っており、圧倒的です。

 よって、難関私立大受験者や、二次に漢文がある難関国公立大学受験者に本書はオススメです。

(3)漢文常識:他の句法問題集にはほぼ載っていない、漢文特有の価値観・考え方・漢文常識が詳細に載っています。これを知ると漢文が格段に解きやすくなります。

(4)「訓読+訳の暗記」:1章や3章には数行の短めの漢文が80編以上載っており、(句法暗記後の)漢文の中心的な勉強である「訓読+訳の暗記」も大量にできます。

※句形・句法:本書では句法(漢文の文法・構文・熟語に当たるもの)を「句形」と表記していますが、一般的に「句法」と呼ぶことが多いので、このページでは「句法」と表記します。

1.2.「訓読+訳の暗記」の重要性

「訓読できて訳せる」漢文が増えるほど、(過去問や入試問題、模試のような)初見の漢文の中で「訓読できて訳せる」部分が増え、正答率が上がりますから、既習の漢文の「訓読+訳の暗記」は超重要です。

創賢塾では、「訓読+訳の暗記」を週1ページ習得するように指導しています。そして30ページ以上習得して漢文の実力が格段に上がった後に、共通テストや志望校の過去問に入るのが望ましいです。

 ※習得:このページでは、「訓読+訳の暗記」によって「漢文をスラスラ訓読でき、訳せるようにする」ことを「漢文を習得する」と呼びます。

本書を始めてからは、「訓読+訳の暗記」の題材を本書の中の漢文にし、毎週1ページ(2~3題)を「訓読+訳の暗記」していきます。

1.3.習得順序

本書の優先課題は【句法・句法例文暗記⇒重要単語暗記⇒漢文常識暗記】です。まずはこの3つを暗記します。

「漢文句形とキーワード」の習得順序】

(1)第1章:句法句法と句法例文を全て「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。1章最後の漢詩の基礎知識、白文書き下し問題対策も、暗記し、習得します。

 「トレーニング(句法が入った数行の漢文)」については、句法に関係する箇所だけをこの時点では習得します。

(2)第2章:重要単語:見出し語の読み・意味を暗記し、例文を理解します。例文の「訓読+訳の暗記」=習得は時間がかかるので後回しにします。

(3)第3章:ジャンル別文章読解:解説を読み、漢文常識(漢文特有の価値観)を暗記し、漢文を習得します。

(4)長期記憶に入れる:入試・模試・実力テスト・定期テストで使える知識にするため、句法・句法例文や漢文は、いったん「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにしてから2ヶ月以上復習して、「訓読+訳の暗記」を長期記憶に入れます。

第1章の「トレーニング」の漢文、第2章の例文の習得は、時間がかかるので後回しにします。1~2年生の間に第3章まで習得できた方は、その後に習得に入っても良いでしょう。

1.4.長期記憶に入れる方法

長期記憶とは、数ヶ月~数年以上もつ記憶のことです。

長期記憶に入れるには、【短期記憶⇒7日復習⇒中期記憶⇒2ヶ月以上復習⇒長期記憶】のように復習します。

全ての情報(記憶)は最初、短期記憶(数時間~数週間もつ記憶)に入ります。その情報が繰り返し入らなかったら(復習しなかったら)、速やかに思い出せなくなります。

その情報を7日(7回)以上復習すると、中期記憶(数週間~数ヶ月もつ記憶)に入ります。そして更に2ヶ月以上復習すると長期記憶に入り、入試時に使える情報になります。

逆に言うと、長期記憶に入れなければ入試には使えないので、入試で必要になる情報は全て、長期記憶に入れることを考えて復習計画を立てる必要があります。

2.第1章:句法

2.1.句法暗記の重要性

漢文では「句法暗記が全て」と言っていいくらい重要です。事実、句法を全て暗記したら成績が上がる生徒はたくさんいます。

句法(例:「未ダ……ズ」)は、句法例文(例:「未ダ嘗テ泣クヲ見ズ」)を「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにすれば、習得できます。

2.2.分割するかどうか

本書には、全部で80以上の句法があります。全句法を一気に暗記するべきか、分割して暗記していくべきかは、人によります。

全句法を一気に暗記するのに適した人は、(夏休みなどで)毎日30~60分を漢文に使える人、半分以上の句法をだいたい暗記している人、記憶力の良い人、漢文が好きな人などです。

それ以外の人は全体を2~4つに分割し、それぞれを10~15周して暗記していくのがオススメです。

創賢塾のホームページに書かれた勉強法をいち早く習得したい高校生のために、自宅で受講できる【5教科の受験勉強法を習得する3ヶ月集中オンラインセミナー】【長期勉強法コース】を開講しています。【高校生用:講座・セミナー一覧】はこちら。関心ある方はご参照ください。

2.3.文法・句法暗記

【第1章:文法・句法暗記法】

(1)漢文法の心得

 ①解説:読んで、知らない知識にマーカーを引きます。2周目以降はそこを中心に読みます。

 ②例文:訓読し、訳し、下記の句法例文暗記法習得します(「訓読+訳の暗記」をします)。

 ③問題:解いて、間違いがあれば原因を理解し、漢文を下記の句法例文暗記法で習得します。

 ④暗記事項:置き字などの暗記事項は、スラスラ言えるまで5周ほど暗記します。第1章を10周(つまり、5周×10周=50周)してしっかり暗記します。

(2)句法・句法例文暗記

 ①句法暗記:句法と句法例文の暗記がこの章の最重要課題なので、句法は、1周目から以下のようにしっかり「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。詳細は後述。

【句法を見て訓読のテスト⇒自力で3回連続スラスラ訓読できるまで訓読する】⇒【句法を見て訳を言うテスト⇒句法を見ながら、自力で3回連続スラスラ訳せるまで訳す】

 ②句法例文暗記:1周目から以下のようにしっかり「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。詳細は後述。

【句法例文を見て訓読のテスト⇒自力で3回連続スラスラ訓読できるまで訓読する】⇒【句法例文を見て訳を言うテスト⇒「書き下し文⇒訳」×5回交互に音読して訳を暗記⇒句法例文を見ながら、自力で3回連続スラスラ訳せるまで訳す】

 ③解説を読む:内容を理解し、重要な部分にマーカーを引きます。2回目以降はそこを中心に読みます。

 解説中の漢文は、1~3周目は訓読して訳し、書き下し文と訳で確認して理解するくらいにして、サッサと進めます。4周目からは、句法例文暗記のやり方で、「訓読+訳の暗記」をします。

 ④暗記事項:解説中の暗記事項は、1~3周目は読んで理解するくらいにして、サッサと進めます。4周目からは、赤字の重要事項で知らないものについては、単語帳にまとめ、暗記します。

 ⑤トレーニング(句法が入った数行の漢文):句法に関係する箇所だけを習得します。3章まで暗記し終わって、時間的余裕があれば「トレーニング」の漢文全体を習得するのも良いでしょう。

 ⑥全句法を10周:句法の1周目が終わったらすぐに2周目に入り、そのまま1~3ヶ月で10~15周します。10~15周すれば、誰でも、いったん全て「スラスラ訓読でき、訳せる」ようになり、中期記憶(数週間~数ヶ月もつ記憶)に入ります。

 ⑦4周目からテスト:句法全体の4周目から毎回、訓読、訳のテストをし、できないものに印を付け、そこだけを上記のように「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。逆に言うと、「スラスラ訓読でき、訳せる」句法・句法例文は飛ばします。

 ⑧分割暗記する場合:句法全体を3つ前後に分割して暗記する場合は、【第1セット10周⇒「第2セット10周+第1セット1周」】のように、毎週既習範囲を復習しながら先へ進めます。

(3)漢詩(124~125ページ)

 ①暗記:漢詩は入試に出ますし、2ページしかありませんから、全部理解し、暗記します。

 ②暗記法:【1日3回音読×7日】のように20回前後音読すれば誰でも暗記できます。

(4)実践・書き下し問題(白文問題:126~129ページ)

 ①白文問題:共通テストをはじめ、入試には白文問題はよく出ますから、全部しっかり理解し、習得します。

 ②習得法:句法パートを10~15周し、完全に暗記した後、この4ページ分を、【「1日1回読んで理解+暗記+問題を解く」×2週間】のように周回します。

 ③白文問題の攻略法:【勉強法(4)白文攻略法】にも詳しく書いています。

(5)長期記憶に入れる

 第1章を10周していったん完全に暗記した後、第2章の勉強と並行して、第1章を2ヶ月以上復習します。

 具体的には、土日などに、句法、句法例文の訓読+訳のテストをし、できないものに印を付け、上記の方法で暗記し直します。1章を2週間で1周するなどし、2ヶ月以上続けます。

 そして、夏休みなどの長期休暇にまた復習し、定着を図ります。

2.4.句法暗記

【句法暗記法】

【句法を見て訓読のテスト⇒自力で3回連続スラスラ訓読できるまで訓読する】⇒【句法を見て訳を言うテスト⇒句法を見ながら、自力で3回連続スラスラ訳せるまで訳す】

(1)訓読:句法を見て訓読し、書き下し文を見て確認します。そして句法を見ながら、自力で3回連続スラスラ訓読できるまで、3~5回前後訓読します。

 このとき、書き下し文は何回見ても構いません。

(2)訳の暗記:句法を見て訳を言い、正解をチェックします。そして句法を見ながら、自力で3回連続スラスラ訳せるまで、3~5回前後訳します。

 このとき、訳は何回見ても構いません。その後、句法例文暗記に進みます。

2.5.句法例文暗記

【句法例文暗記法】

【句法例文を見て訓読のテスト⇒自力で3回連続スラスラ訓読できるまで訓読する】⇒【句法例文を見て訳を言うテスト⇒「書き下し文⇒訳」×5回交互に音読して訳を暗記⇒句法例文を見ながら、自力で3回連続スラスラ訳せるまで訳す】⇒【2ヶ月で10周以上⇒長期記憶】

(1)訓読:句法例文を見て訓読し、書き下し文を見て確認します。そして句法例文を見ながら、自力で3回連続スラスラ訓読できるまで、3~5回前後訓読します。

 このとき、書き下し文は何回見ても構いません。

(2)訳の暗記:句法例文を見て訳を言い、正解をチェックします(訳が分からなかったらすぐに訳を見て構いません)。

 次に、書き下し文と訳を5回交互に音読し、訳を暗記します(例:【「未だ嘗て泣くを見ず」⇒「まだ泣くのを見たことがない」】×5回)。

 そして句法例文(漢文)を見ながら、自力で3回連続スラスラ訳せるまで、3~5回前後訳します。

 このとき、訳は何回見ても構いません。その後、解説を読みます。

(3)長期記憶に入れる:第1章を10周以上周回して、句法・句法例文を長期記憶に定着させます。

2.6.一周目は先に進むことを優先する

最初から、句法・句法例文・解説・解説中の暗記事項・トレーニング(句法が入った数行の漢文)などをしっかり暗記しようとしたら、暗記事項が多いので、挫折率が高まります。

よって、最初の1~3周は、句法と句法例文を習得する(スラスラ訓読でき、訳せるようにする)ことを優先し、その他は、(暗記せず)いったん理解するにとどめ、4周目以降から徐々に暗記するのがオススメです。

2.7.短期集中暗記

句法を暗記するときは1~3ヶ月で一気に暗記します。

仮に1日1句法を暗記していったら、全部で80以上の句法がありますから、1周目で2ヶ月以上かかります。そんなことをしていたら、いつまで経っても暗記できません。

よって、数ヶ月間を漢文の強化月間にして、「毎日30分+土日1時間」など、漢文を集中的に勉強します。

例えば、1周目は毎日3句法(+土日6句法ずつ:21日)、2周目は毎日5句法(+土日10句法ずつ:12日)、3周目は毎日7句法(9日)など進め、1~3ヶ月で10周します。

もしくは、夏休みなどに一気に暗記します。

2.8.読み仮名を消す

1~3章の句法や重要単語の横に、たまに、読み仮名が振られている箇所があります。その場合、読み方も覚えるため、横に書かれている読み仮名を修正テープ(修正液、ホワイト)などで消します。

例えば、「安(いず)クニカ」であれば、「いず」のような読み仮名を修正テープなどで消します(送り仮名や返り点は消しません)。

3.第2章:重要単語・キーワード

3.1.分割暗記

第2章には400以上の重要単語が載っており、一気に暗記するのは難しいので、全体を幾つかのパートに分けて暗記していくのがオススメです。

ここでは10ページを1パート(全6パート)にして暗記していく方法を書いていきます。

3.2.暗記法

【重要単語暗記法】

(1)見出し語の暗記

 ①見出し語の暗記:見出し語の読み・訓読・意味を全て暗記します。

 ②例文:見出し語の暗記が優先なので、例文(漢文)は、見出し語に関係する箇所だけを暗記し、その他の箇所は理解するにとどめます。例文の「訓読+訳の暗記」はやらなくて構いません。

(2)暗記法

 ①単語の場合:紙で見出し語の漢字以外を隠し、見出し語を見て読み・意味を言い、紙をずらして確認し、正解なら次へ。

 不正解なら印を付け、正解を5回前後音読・暗唱し、覚えます。同じ箇所を隠して言ってみて、言えたら次へ。いったん言えるまで暗記します。

 ②漢文の場合:一二点やレ点が付いている漢文(漢字数文字)の場合、紙で見出し語の漢文以外を隠し、見出し語を見て読み・訓読・意味を言い、紙をずらして確認し、正解なら次へ。

 不正解なら印を付け、上述の句法暗記法のやり方で暗記します。そして同じ箇所を隠して言ってみて、言えたら次へ。いったん言えるまで暗記します。

 ③見開き2ページを3~5周暗記:見開き2ページを暗記したら、そこを更に2~4周ほど繰り返していったん完全に暗記します。

 2周目は印を付けた箇所のみ、3周目は2周目に間違えた箇所のみ(以下同)、暗記します。間違いがゼロになったら次の見開きに進みます。

 ④全問即答:その日の時間まで次々進め、2~3日で第1セットの終わりまで進めたら、第1セットの2周目に入ります。

 以後同様に第1セットを完全に暗記する(=全問即答できる)まで、1~2週間で10~20周します。

 ⑤第2セット暗記:第1セットを暗記したら第2セットに入り、同様に、第2セットを10~20周し完全暗記します。以下同。

 ⑥徹底的に復習:第2セットに入って以降、既習セットを全て、毎週復習します。

 例えば第5セットを暗記中なら、【1セット20分×週2回×4セット】など復習します。かける時間は、即答が維持できるだけの時間です。

(3)長期記憶に入れる

 全体を暗記した後も、【「テスト⇒確認⇒間違いに印⇒暗記」×2週間に1周×4ヶ月以上・10周以上】復習し、長期記憶(数ヶ月~数年以上もつ記憶)に入れていきます。

 また、夏休みなどの長期休暇に復習し、定着を図ります。

4.第3章:ジャンル別文章読解(漢文常識)

4.1.暗記法

【漢文常識の暗記法】

(1)漢文常識の暗記

 ①何を習得するか:漢文常識(漢文特有の価値観)の解説を理解し暗記し、関連キーワードの読みと意味を暗記し、左ページの漢文を習得します。

 ②5周:第3章全体を5~10周し、暗記します。

(2)暗記法

 ①見開き2ページ×3周:解説を5回音読してある程度理解・暗記し、関連キーワードを第2章の重要単語の要領で3~5周暗記し、左ページの数行の漢文を習得します。漢文習得法は【勉強法(3)漢文長文習得法】参照。

 ②第3章5周:見開きの1節を暗記したら次の節へ。同様に暗記し、最後まで進め、そのまま第3章を5周し、漢文常識・関連キーワード・漢文を暗記します。

(3)長期記憶に入れる

 ①長期記憶に入れる:第3章を5周したらだいたい暗記できますから、次は過去問などの問題演習に進みます。

 しかし、まだ長期記憶に入った訳ではないので、その後も本書を3~4週間に1周復習し、トータル10周以上復習し、長期記憶に入れていきます。

 ②辞書代わり:問題演習時に本書を辞書代わりに使いましょう。そうすれば記憶が強化されます。

4.2.問題演習

第3章までの習得が1~2年生時に終わったら、まだ習得していなかった、1章のトレーニング(句法が入った数行の漢文)、2章の例文等の漢文を習得しても構いません。

しかし、3年生で習得が終わったら、時間も無いので、問題演習に入るのがオススメです。

5.終わりに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

この文章があなたのお役に立てれば幸いです。

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