入試や模試のような、初見の古文をスラスラ訳せるようにするには、(1)現代語訳の暗記、(2)品詞分解、(3)古文単語の暗記、の3つが必須です。
このページでは、このうち、「現代語訳の暗記法(既習の古文を訳せるようにする方法)」を解説していきます。
1.初見の古文をスラスラ訳せるようにする4つの勉強
1.1.古典文法の暗記
訳の暗記をするにしても、品詞分解にしても、古典文法をある程度暗記していないと理解しにくいですから、「訳の暗記+品詞分解」の前に(あるいは並行して)古典文法を一通り暗記します。
古典文法の教科書には膨大な情報が載せられ、どこまで暗記して良いか分からないですが、結論としては、「古典文法は品詞分解がある程度できるくらいに暗記すれば良い」です。
「品詞分解がある程度できる」ためには、以下の2つを習得すれば大丈夫です。
(1)薄い古典文法問題集を5周:「ステップアップノート30 古典文法基礎ドリル」(河合塾)のような薄い古典文法問題集を5周してある程度暗記します。
(2)3項目をしっかり暗記:以下の3つを完全に暗記します。
①活用:「動詞・形容詞・形容動詞」の活用。
②助動詞の活用表:接続・活用全体・意味・現代語訳。
③敬語動詞:元の動詞・現代語訳。
以上を1~2ヶ月で暗記します。
古典文法の習得法については【勉強法(2)古典文法最短暗記法】に書いています。
1.2.現代語訳の暗記
このページに書いている「訳の暗記法」により、学習した古文はスラスラ訳せるようになります。よって、訳の暗記をすることで、定期テストの古文の成績が上がります。
そして、訳の暗記を続け、30~50ページ以上訳せるようにすることで、初見の古文もだいたい、感覚的に意味が分かるようになります。
1.3.品詞分解
品詞分解とは、「古文の各単語の品詞・活用・活用形・意味などを分析すること」です。「識別」とも言います。基本的には、訳の暗記をした同じ古文の文章で、品詞分解も暗記していきます。
訳の暗記をすれば、何となく意味が理解できるのに対して、品詞分解をすれば、意味を文法的に正確に理解できるようになります。
例えば、「けふは、内裏に参りぬ」の「ぬ」が、なぜ打ち消しの助動詞「ず」(の連体形)ではなく、完了の助動詞「ぬ」(の終止形)になるのかはよく分からないが、とにかく「今日は宮中に参内(さんだい)した」という現代語訳を覚えるのが「訳の暗記」。
そして、【完了の助動詞「ぬ」の接続は連用形、打ち消しの助動詞「ず」の接続は未然形で、「参り」はラ行四段活用の動詞「参る」の連用形だから、この「ぬ」は、連用形接続である完了の助動詞「ぬ」である】と理解するのが「品詞分解」。
こう書くと難しく感じるかもしれませんが、(大量の古文単語の意味を覚える必要がある)「訳の暗記」に比べて「品詞分解」は(助動詞や敬語など限られた文法事項を暗記すれば良いので)習得するのが容易です。
すなわち、約12時間で10ページを「スラスラ品詞分解できる」ようにすれば、初見の古文のほとんどは品詞分解できるようになります。
品詞分解の具体的方法については【古文・品詞分解を12時間で習得する方法】で詳しく解説しています。
1.4.古文単語暗記
訳の暗記をして「スラスラ意味が分かるようになった古文」が30ページを超えると、初見の古文が以前よりはかなり理解できるようになります。
しかし、30ページではまだ初見の古文をスラスラ読めるまでには至りません。なぜなら、名詞・動詞・形容詞などの意味が分からない古文単語が多数あるからです。
この対策は、以下の2つです。
(1)「訳の暗記」を50ページ、100ページと増やすこと。
(2)600ワードレベルの古文単語集を1冊暗記すること。
古文単語集には300ワードレベル(共通テスト・中堅大学レベル)のものと、600ワードレベル(難関大学レベル)のものがありますが、文系・理系を問わず、入試に古文がある生徒には、創賢塾では600ワードレベルの単語集をオススメしています。300ワードしか差がないので労力は大して違いませんし、効果は大きいからです。
【古文単語暗記法】についてはこちらで解説しています。
1.5.適切な勉強をすれば初見の古文は理解できるようになる
600ワードレベルの古文単語集を1冊暗記し、「訳の暗記+品詞分解」を50ページ習得すれば、初見の古文もだいたいは理解できるようになります。
そして、100ページ習得すれば、初見の古文の意味はほぼ分かるようになり、古文偏差値は65~70を超えます。
【苦手の古典が8点⇒68点に上がりました】
Yさん(高校2年生、京都府)のお母様
息子は、中学生の時は比較的勉強が良くでき、希望した中高一貫校の高校(偏差値70)に進学したのですが、授業のスピードがかなり速く、どんどん落ちこぼれていきました。現在高2ですが、何をどのように勉強したらいいかわからない様子で、途方に暮れている姿を見兼ねて、先生のサポートをいただきたく、入塾しました。
創賢塾でお世話になり、数ヶ月経ちました。息子は以前とは違い、集中して勉強に取り組むようになりました。 前回の定期考査(2年2学期中間試験)では、
コミュ英語:15点⇒43点
論理表現:16点⇒49点
化学:43点⇒56点
など、多くの科目で点数が上がり、特に前回8点だった古典で68点を取ることができ、本人も驚いた様子でした。
以前は成績が低迷してやる気を失っていたのですが、今は「やればやるだけ成績が上がることが分かり、やる気がでるようになった」と話しております。 計画通りに勉強が進まず、イライラすることも多いようですが、真剣に勉強に取り組み出した証だと思い、様子を見ているところです。
創賢塾のホームページに書かれた勉強法をいち早く習得したい高校生のために【5教科のテスト勉強法を習得する3ヶ月自宅集中セミナー】【長期勉強法コース】を開講しています。【高校生用:講座・セミナー一覧】はこちら。関心ある方はご参照ください。
2.既習の古文をスラスラ訳せるようにする方法
2.1.古文の訳の暗記法
ここでは、既習の古文(学校や塾の授業で扱った古文など)をスラスラ訳せるようにする「訳の暗記法」の概略を書きます。詳細は次項以下で解説します。
【古文をスラスラ訳せるようにする古文の訳の暗記法】
(1)古文の訳の暗記法:【「点やマルなどの意味の区切りで、『古文⇒現代語訳』×3回音読×半ページ×1日3周⇒次の半ページ3周」×7日】
①「毎日20分×7日」で1ページ習得:1日に訳の暗記をする時間を20分(土日40分)など決め、半ページ(約5~7行)を1セットにし、その日進めるだけ進めます。できるだけ「毎日1ページ」進めますが、最初は時間が掛かるので、半ページでも仕方ありません。
②翌日も同じ個所(第1セット)から始める:毎日第1セットから始め、1週間続けることで、最初の方は目に見えて習得できます。
③4日目から毎日テスト:【テスト⇒スラスラ訳せない部分に印⇒そこを「古文⇒現代語訳」×5回音読×3周】
3~5日してだいたい訳を暗記したと思ったら、古文を訳すテストをし、訳せない部分を覚えます。テストは4日目から毎日行います。
④以上を7日行う:1ページをスラスラ訳せるようになったら次の1ページに移行します。
7日でスラスラにならなかったら、8~12日など延長して、スラスラ訳せるようにします。
(2)2ヶ月以上復習:【最初にテスト⇒印を付けた部分を「古文⇒現代語訳」×5回音読×3周(1ページ10分)×週1回×2ヶ月以上】
①2ヶ月以上復習する:毎週新規で1ページ習得するのと並行して、上記のように前の部分を復習します。復習は土日にやると良いでしょう。
いったん暗記が終わった場所も、復習しなければ忘れるので、2ヶ月以上復習を続けます。2ヶ月復習したら長期記憶(数ヶ月~数年以上もつ記憶)にほぼ入るので、その文章は外します(長期休暇にはまた復習します)。
②長期休暇に復習:【毎週新規で1ページ「訳の暗記+品詞分解」+復習⇒テスト前3週間はテスト範囲の古文に100%集中⇒テスト後に新規の「訳の暗記+品詞分解」と前の部分の復習を再開⇒テスト前3週間はテスト範囲の古文に100%集中⇒テスト後再開⇒夏休み・冬休み・春休みに既習範囲全てを復習】
2ヶ月と言っても、実際にはテストや行事もあり、なかなか続けられないことも多いと思います。
よって以上のようにしつこく復習し、その学年が終わる時点まで、1年間に「訳の暗記+品詞分解」をした文章全てについて「スラスラ品詞分解できる+スラスラ訳せる」状態を維持します。
テスト範囲の文章については、いったん「訳の暗記+品詞分解」し、テストまで復習し、テスト後も1ヶ月以上復習し、長期休暇にも復習します。
2.2.品詞分解と訳の暗記は並行して行う
品詞分解だけできて、文章が理解できなければ意味がないので、「訳の暗記(訳せるようにすること)」は「品詞分解」と並行して行います。
毎日どちらを先にやるかについては、どちらでも大差はありませんが、意味が分かった方がやりやすいので、「訳の暗記⇒品詞分解」にした方が良いでしょう。
2.3.「時間」を決める
「訳の暗記+品詞分解」は、「1日1ページ3周」などの周回数・量ではなく、「1日40分(品詞分解20分+訳の暗記20分)」などの時間で行います。量で行うと他の勉強に支障が出るからです。
適正時間は、「平日40分(品詞分解20分+訳の暗記20分)、土日80分」です。
ある程度の時間を掛けて集中的にやらないと「品詞分解+現代語訳」をスラスラできるようにならないので、このくらい勉強した方が良いのです。毎日10分(品詞分解5分+訳の暗記5分)などの少ない時間では、いつ習得できるか分かりません。
2.4.毎週1ページを習得する
できるだけ毎週1ページ「訳の暗記+品詞分解」をスラスラできるようにします。
ただしそれは個々人の文法力・単語力・勉強時間に左右されますから、最初は週半ページ(約5~7行前後)でも仕方ありません。
習得量が10ページ、30ページ、50ページと増えるにつれ、1ページを習得できるまでの時間は減っていきます。その際、特に文系の方は、時間を減らすのではなく、習得量を増やしていきましょう。
創賢塾の生徒さんの中には、週10ページ習得している人もいます。そうなれば当然、古文は無敵になります(古文偏差値は70を超えています)。
2.5.一度に訳の暗記をする量は半ページ
「訳の暗記+品詞分解」は毎週1ページ習得しますが、一度に習得するのは半ページ(約5~7行前後)ごとにするのがオススメです。つまり、毎日「半ページを3周⇒次の半ページを3周」暗記していきます。1ページだと少し多くて覚えにくいからです。
「訳の暗記+品詞分解」をし始めの頃は、結構時間が掛かるので、1~3日目は「半ページ×3周」、3~5日目は「半ページを3周⇒次の半ページを3周」、6~7日目は「半ページを3周⇒次の半ページを7周」のような感じで進め、1週間に20周以上繰り返します。
3.使用教材
訳の暗記は品詞分解とセットで行う方が良いので、(一部ではなく)全文に品詞分解のある教材をできるだけ使います。
(1)最優先:学校の授業で扱う(次のテストに出る)古文の文章。
学校で品詞分解のプリントが配られるならそれで、配られないなら「教科書ガイド(ほとんどの教科書ガイドにはほぼ全文に品詞分解が載っています)」を買ってそれで「訳の暗記+品詞分解」をします。
(2)次:学校で今まで学習した古文の文章。1回学習していれば、ゼロから始めるより暗記しやすいため。
(3)参考書の古文:学校の教材を全部暗記したら、全文に品詞分解が付いた以下のような参考書の古文を1つずつ習得していきます。
「理解しやすい古文」(文英堂)
「教科書ガイド」(学校で扱わなかった文章も習得する)
4.訳の暗記の目標
4.1.到達目標
(1)毎週1ページ習得する:毎週1ページの古文を習得し、スラスラ品詞分解でき、スラスラ訳せるようにします。
(2)スラスラ訳せるようにする:「え~と、何だっけ」と考えて3~5秒後にやっと意味が出てくる程度の習熟度では、すぐに忘れてしまいます。
スラスラ訳せる、意味を即答できるようにすれば、中期記憶(数週間~数ヶ月もつ記憶)に入り、しばらく忘れません。
(3)1年間で50ページ分を習得する:きちんと復習しながら1年間続ければ、50ページ分になります。
50ページ分を「訳の暗記+品詞分解」ができる高校生は5%以下ですから、成績は間違いなく上がるでしょう。
(4)長期記憶に入れる:いったん習得した後も2ヶ月以上復習を続け、夏休み・冬休み・春休みにも復習し、その学年が終わる時点まで、1年間に「訳の暗記+品詞分解」をした文章全てについて、「スラスラ品詞分解できる+スラスラ訳せる」状態を維持します。
そうすればその知識は長期記憶(数ヶ月~数年以上もつ記憶)に入り、入試で使えます。
4.2.初期目標は30ページ、最終目標は100ページ以上
「品詞分解」は10ページ習得すれば、初見の古文もほぼ品詞分解できるようになりますが、「訳の暗記」は、10ページやっても、初見の古文で意味がだいたい分かるようにさえなりません。意味の知らない単語が多数あり、また主語が分からなかったり話の流れが読めなくなったりするからです。
創賢塾では「訳の暗記」の初期目標を30ページにしています。期間は約7ヶ月。600ワード収録の古文単語集を1冊暗記した上で、「訳の暗記+品詞分解」を30ページ習得すれば、格段に意味が分かるようになります。
そして、50ページで(意味をだいたい分かるかは文章にもよりますが)問題はほぼ解けるようになり、
100ページで、古文が理解できない、以下の4大要因はほとんど解決できます。
(1)品詞分解できないこと。
(2)古文単語の意味が分からないこと。
(3)主語が分からなくなること。
(4)古文特有の話の流れを知らないこと。
「訳の暗記+品詞分解」を100ページ習得すれば、たいていの問題は解けるようになり、古文偏差値は70を超えるでしょう。
よって、最終目標を100ページ以上に設定しています。
4.3.「訳の暗記+品詞分解」リストを作る
「訳の暗記+品詞分解」を3~4ヶ月続けると、習得した文章が10ページを超え、それぞれの復習時期を管理しきれなくなります。そこで、以下のようなリストをルーズリーフ(もしくはパソコン)で作り、管理します。
【「理解しやすい古文」1「宇治拾遺物語ー児の空寝」|11/12「訳の暗記+品詞分解」ok、11/19復習10分ok、】
このようにリスト化することで、次にいつ復習するべきかが分かります。
復習周期としては、10ページを超えるまでは毎週全部、10ページを超えたら1~3週間に1回以上復習します。
5.終わりに
以上、古文を訳せるようにする方法を解説しましたが、書いたものを見ると難しく感じるかもしれません。しかし、やってみればとても簡単です。
ぜひ1ヶ月、我慢してやってみることをオススメします。
もし自力では難しいと思われた場合は、創賢塾で指導もしています。ご活用下さい。
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