このページでは、優れた句法問題集である「三羽邦美の漢文教室」(旺文社)の習得法をご紹介します。
1.特徴と習得順序
1.1.特徴
【「三羽邦美の漢文教室」の特徴】
(1)句法暗記:必要十分な数の句法が習得できます。
(2)漢文に慣れる:有名な故事成語で漢文に慣れることができます。
(3)知識は弱い:漢文特有の言葉の意味や漢詩の知識など、必須知識がまとまっていないので、それは別の問題集で補う必要があります。
1.2.習得順序
【「三羽邦美の漢文教室」の習得順序】
(1)句法例文を暗記する:第1章(ウォーミングアップ編)の句法例文を全て「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
(2)問題を解く:第1章の句法例文の間にある問題を解き、漢文を「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
(3)漢文を習得する:第2章(実践編)の漢文(故事成語)を「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
(4)長期記憶に入れる:入試・模試・実力テスト・定期テストで使える知識にするため、句法例文や漢文は、いったん「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにしてから2ヶ月以上復習して、「訓読+訳の暗記」を長期記憶に入れます。
1.3.長期記憶に入れる方法
長期記憶とは、数ヶ月~数年以上もつ記憶のことです。
長期記憶に入れるには、【短期記憶⇒7日復習⇒中期記憶⇒2ヶ月以上復習⇒長期記憶】のようにします。
全ての情報(記憶)は最初、短期記憶(数時間~数週間もつ記憶)に入ります。その情報が繰り返し入らなかったら(復習しなかったら)、速やかに思い出せなくなります。
その情報を7日(7回)以上復習すると、中期記憶(数週間~数ヶ月もつ記憶)に入ります。そして更に2ヶ月以上復習すると長期記憶に入り、入試時に使える情報になります。
逆に言うと、長期記憶に入れなければ入試には使えないので、入試で必要になる情報は全て、長期記憶に入れることを考えて復習計画を立てる必要があります。
2.第1章(ウォーミングアップ編)の句法例文暗記
2.1.句法暗記の重要性
漢文では「句法暗記が全て」と言っていいくらい重要です。事実、句法を全て暗記したら成績が上がる生徒はたくさんいます。
句法(例:「未ダ……ズ」)は、句法例文(例:「未ダ嘗テ泣クヲ見ズ」)を「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにすれば、習得できます。
2.2.目標
(1)句法・句法例文・漢文を習得:句法・四角で囲まれた句法例文・練習問題の漢文を全て「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
第1章(ウォーミングアップ編)の最初には、文型、返り点の例文がありますが、これも句法例文・句法と同様に「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
(2)解説を習得:解説を合計10回以上読み、内容を全て理解し、暗記します。
この参考書に書かれている内容は最小限なので、全て暗記します。
2.3.短期集中暗記
句法を暗記するときは1~3ヶ月で一気に暗記します。第1章は約120ページで約120の句法例文が載っており、仮に週10個で1周に2~3ヶ月もかけていたら、いつまで経っても暗記できません。
よって、数ヶ月間を漢文の強化月間にして、「毎日30分+土日1時間」など、漢文を集中的に勉強します。
例えば、第1章(約120ページ)の1周目は毎日6ページ(20日)、2周目は毎日10ページ(12日)、3周目は毎日15ページ(8日)など進め、1~3ヶ月で10周します。
もしくは、夏休みなどに一気に暗記します。
2.4.読み仮名を消す
読み方も覚えるため、句法例文の横に書かれている読み仮名を修正テープ(修正液、ホワイト)などで消します。
例えば、再読文字の「子ヲ知ルハ親ニ如(し)クハ莫(な)シ」であれば、「如(し)クハ莫(な)シ」の「し」「な」のような読み仮名を修正テープなどで消します(送り仮名や返り点は消しません)。
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2.5.句法例文暗記
【句法例文暗記法】
(1)句法例文暗記:【訓読のテスト⇒スラスラ訓読できるまで3回前後訓読】⇒【句法例文を見て訳を言うテスト⇒「書き下し文⇒訳」×5回交互に音読して訳を暗記⇒句法例文を見ながら、スラスラ訳せるまで3回前後訳す】
①訓読:句法例文を見て訓読し、書き下し文を見て確認します。そして句法例文を見ながら、自力でスラスラ訓読できるまで、3回前後訓読します。
このとき、書き下し文は何回見ても構いませんが、それは回数にカウントしません。
②訳の暗記:句法を見て訳を言い、正解をチェックします。そして、書き下し文と訳を5回交互に音読し、訳を暗記します(【「子を知るは親に如(し)くは莫(な)し」⇒「子供のことを理解することに関しては、親にまさるものはない」】×5回)。
そして句法例文(漢文)を見ながら、自力でスラスラ訳せるまで、3回前後訳します。
このとき、訳は何回見ても構いませんが、それは回数にカウントしません。その後、解説を読みます。
③句法も暗記:句法(宜シク……スベシ等)がある場合も同様にして「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
④解説を読む:内容を理解し、重要な部分にマーカーを引きます。2回目以降はそこを中心に読みます。
⑤知識をルーズリーフにまとめる:句法例文や練習問題の解説に書かれていることは全て暗記します。よって、句法の読み・意味、語句の読み・意味等で、そのままでは暗記しにくいものについては、ルーズリーフに一問一答式でまとめ、暗記します。
例えば、【苟シクモ|いやしくも、意味:仮にも、もし】【為(レ点)人|ひととなり、意味:性格、人柄】のようにまとめ、暗記します。
⑥第1章を1周:1つ目の句法例文が終わったらすぐに2つ目の句法例文へ進み、同様に「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。以下同様に、第1章の最後まで進めます。
(2)練習問題
句法例文の間にある練習問題は、解いて、句法例文と同様のやり方で、漢文を「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
(3)第1章を10周する
①10周:第1章の1周目が終わったらすぐに第1章の2周目に入り、そのまま1~3ヶ月で10周します。10周すれば、誰でも、いったん全て「スラスラ訓読でき、訳せる」ようになります。
②4周目からテスト:4周目から毎回、訓読、訳のテストをし、できないものに印を付け、そこだけを上記のように「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
③セット法:全体を一気に暗記するのが難しいと思ったら、全体を20~30句法のセットに分けて、セットごとに10周していく方法も有りです。
例えば、約120ページ(約120句法)を3つに分け、1セットを40ページにして1~2週間前後で10周し、それを完全に暗記したら第2セットに進みます。
(4)長期記憶に入れる勉強法
第1章を10周していったん完全に暗記した後、第2章の勉強と並行して、第1章を2ヶ月以上復習します。
具体的には、土日などに、句法例文、問題の漢文を訓読し、訳して、できないものに印を付け、上記の方法で暗記します。これを2週間で第1章を1周するなどし、2ヶ月以上続けます。
そして、夏休みなどの長期休暇にまた復習し、定着を図ります。
3.第2章(実践編)の漢文習得
句法を暗記したら、第2章の故事成語を全て「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
【故事成語を習得する】
【「1行目を訓読⇒スラスラ訓読できるまで3回前後訓読」⇒「1行目を見て訳を言うテスト⇒書き下し文と訳を5回交互に音読して訳を暗記⇒1行目の漢文を見ながら、スラスラ訳せるまで3回前後訳す」⇒次の行へ⇒最後まで×1日3周×7日】
(1)1つ目の故事成語の1周目:【1行ずつ「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにする】
①目標:故事成語(漢文)を1行ずつ「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
②暗記法:句法例文と同じです。【1行目を訓読⇒スラスラ訓読できるまで3回前後訓読】⇒【1行目を見て訳を言うテスト⇒「書き下し文⇒訳」×5回音読⇒1行目の漢文を見ながら、スラスラ訳せるまで3回前後訳す】。
③1周目:1行目を「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにしたら、すぐに2行目に行き、最後まで進めます。その後、解説を読みます。
④解説を読む:解説を読み、知らない知識、重要な箇所にマーカーを引きます。2週目以降はそこを中心に読み、暗記します。
⑤句法:上記句法例文暗記の要領で、「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。
⑥重要単語:ルーズリーフに一問一答式でまとめ、別途、暗記します。
(2)1つ目の故事成語の2周目以降:【1つ目の故事成語を1日3周×7日】
①1日3周:できるだけ1日3周します。解説は1日1回だけ読みます。
②4日目からテスト:4日目から毎日、訓読、訳のテストをし、できない個所に印を付け、そこだけを上記のように「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにします。これを1日3周します。
③7日:5~7日目も同様にします。全体が「スラスラ訓読でき、訳せる」ようになったら、2つ目に行きます。
(3)2つ目以降の故事成語:2つ目以降も同様に「スラスラ訓読でき、訳せる」ようにし、解説・句法・重要単語を暗記します。週1つなど習得していきます。
(4)長期記憶に入れる
1つ目の故事成語を暗記したら、2つ目の故事成語の暗記と並行して、1つ目の故事成語を【「週1回訓読・訳のテスト⇒間違いに印⇒上記のように暗記」×2ヶ月以上】など、復習し続けます。
2つ目の故事成語を暗記したら、3つ目の故事成語の暗記と並行して、1つ目、2つ目の故事成語を【「週1回訓読・訳のテスト⇒間違いに印⇒上記のように暗記」×2ヶ月以上】など、復習し続けます。以下同。
また、夏休みなどの長期休暇に復習し、定着を図ります。
4.終わりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
この文章があなたのお役に立てれば幸いです。
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