「集中12日間! 英文法のいちばん大事なところ」(水野卓著、旺文社)は、解説が詳しく分かりやすいため、高校英文法をゼロから習得したい人、英文法が苦手で総復習したい人に最適です。
このページでは、この本の特徴・習得法を書いていきます。この習得法は、他の英文法解説書でも同様に使えます。
1.特徴
(1)理解しやすい:解説は詳しめで分かりやすく、一番最初の英文法解説書として使いやすい。
(2)1冊で高2レベルに行ける:高校英文法の初級から中級レベルまでの核心部分が含まれているので、これさえ習得すれば、以下のような大学入試用英文法問題集に入れます。
「Next Stage英文法・語法問題」(桐原書店)
「世界一わかりやすい 英文法・語法の特別講座」(関正生著、角川)
「スクランブル英文法・語法」(旺文社)
(3)適切な量:360ページで、量的に多すぎず少なすぎないので、スラスラと進められ、復習がしやすい。
(4)問題も付いている:問題も適量に載っており、理解と暗記の確認ができる。
(5)欠点:「肘井学のゼロから英文法が面白いほどわかる本」(角川、303ページ)にあるような暗唱例文集(【左に日本語訳|右に英文】が暗記しやすいように載っている例文集)も音声もないのが欠点です。改善していただきたいものです。
2.習得法
2.1.習得の目標
(1)英文:全英文を和訳でき、文法的に解説できるようにする。
(2)言い換え:この本に載っている、受動態や倒置、分詞構文の言い換えをできるようにする。
(3)暗記:全知識を暗記する。
(4)問題:全問題をスラスラ解けるようにし、正しい選択肢がなぜ正解か、不正解の選択肢がなぜ不正解かを説明できるようにする。
2.2.習得法
「集中12日間! 英文法のいちばん大事なところ」習得法
(1)1章を5周し、全知識を暗記する
①1周目:解説を読み、知らない知識にマーカーを引く:2周目以降はマーカーを中心に読みます。時間短縮のため。
②解説中の英文は瞬間英作文で暗記:【英文を2回口頭和訳⇒英文を7回音読⇒暗唱⇒瞬間英作文(日本語を見て英語に訳す)⇒言えたら次へ、言えなかったら「音読⇒暗唱⇒瞬間英作文」⇒言えたら次へ】
③細かい知識はいったん暗記する:「~について述べる|refer to ~(自動詞), mention(他動詞)」「現在完了の3用法|経験・継続・完了(結果)」などの暗記事項は、1周するごとに毎回いったん音読などで暗記します。
④章末問題を解く:間違えた問題の英文は瞬間英作文で暗記します。そうすることで、問題はすぐに解けるようになります。
初回間違えた問題は、3回連続で解けたら外します。
⑤さっと1周する:1周目は軽く流してどんどん進めます。つまり、分からない部分を5~10分も考えたり調べたり、細かい知識を1ページ10分も暗記したりはしません。どうせ10周以上するので、そのうち分かる、そのうち暗記すると考えて、どんどん進めます。
⑥1周目の目安時間:1章分(平均30ページ)1周目90分。
(2)2周目
①知らない知識をまとめながら進める:意味が分からなかった英単語熟語・表現などは自作英単語帳に、文法的知識はルーズリーフに以下のように一問一答式で「英文法まとめノート」としてまとめ、書いた日から暗記します。
【~について述べる|refer to ~(自動詞), mention(他動詞)】
【過去完了形とは|現在完了が「現在」を起点に、それまでの「経験・継続・完了」を表すのに対して、過去完了は「過去のある一時点」を起点に、それまでの「経験・継続・完了」を表す。】
②まとめを暗記する:まとめを書いた日から毎日暗記します。即答できるようになった知識は外していきます。全部暗記してから3周目に入ります。
③2周目の目安時間:まとめと暗記で2時間。
(3)1章全体を5周したら、次の章に入る
①5周する:2周目とまとめの暗記を終えたらすぐ3周目に入り、まとめの復習をしながら5周します。5周したらかなり理解・暗記ができているはずです。
②「1章×5周」にかかる時間の目安:約6時間。
(4)次章以降:全体を1周する
①やり方は全く同じ。
②復習しつつ、先に進める:先に進めるときのポイントは、「復習しつつ、先に進める」ことです。そうすれば、1冊終わった段階で、ほぼ全てを理解・暗記できています。
③復習方法:例えば新規で6章に入った場合、「6章×5周」しつつ、1~5章について、「毎日1章復習(本文を読み、英文を瞬間英作文で暗記し、問題を解き、まとめを暗記する)」します。
④1章当たりの復習時間の目安:15分。
⑤12章全体1周目にかかる時間の目安:6時間×12章(72時間)+復習全体18時間=100時間。1日1時間で約3ヶ月、1日30分で半年です。
(5)全体を10周以上復習し長期記憶に入れる
全体1周目を終えたら、ほぼ全てを理解・暗記できているはずですが、しかし、全てが長期記憶(数ヶ月~数年以上もつ記憶)に入っているわけではないので、「毎日1章×10分」のように2~3ヶ月以上復習し、長期記憶に入れていきます。
2.3.瞬間英作文の意味
間違えた問題の英文を瞬間英作文で暗記するのは、そうすれば問題はすぐに解けるようになるからであり、また、英語力・英文法力・英作文力が格段に上がるからです。ただ解いて理解するより、問題集を速く習得できます。
英文法問題集の英文を英作文できるようにしよう
「安河内の新英語をはじめからていねいに1」(著名英語講師・安河内哲也著、183p)
今まで出てきた英文は、できたら全部、日本語を見ればサッと出てくるようにしておこう。否定文でも、疑問文でも、自動的、直感的に言えるようにならなくちゃダメ。
日本語訳を見たら、コンピューターのようにすばやくピッと反応して、英語の文を書けるようになるまで、何度も何度も復習するんだ。
2.4.補足:英文法の習得テクニック
(1)仮定法:仮定法は紛らわしいので、英文を英作文できるように覚えていないと、英文を正確に訳せないし、英文法問題をきちんと解けません。よって、他の章と違い、例文を全部、瞬間英作文で覚えていきます(これは「総合英語」の例文でも構いません)。
(2)分詞構文:分詞構文とは、「接続詞と主語を省略して、動詞を分詞(過去分詞と現在分詞=ing形)にした英文」のことです。省略される接続詞はほぼ全ての接続詞で、それは前後関係から推測する必要があります。主語は主節の主語と原則同じだから省いても分かります。
分詞構文を本当に理解するには、分詞構文の英文から、主語や接続詞のある元の英文を復元をしてスラスラ訳せるようにすることや、逆に、主語や接続詞のある普通の英文から分詞構文の英文を作る練習をすることが役立ちます。それには以下のようにルーズリーフにまとめると良いでしょう。
【Having cute dogs, she is happy.(分詞構文) |As she has cute dogs, she is happy. 可愛い犬を飼っているので、彼女は幸せだ。】
こうして10英文くらいをまとめ、左の分詞構文の文から、右の普通の英文を復元し、和訳する、逆に、右の英文から分詞構文を作る練習をすると、分詞構文がすっきり分かってきます。
(3)その他の言い換え:能動態⇔受動態、否定語の通常文⇒倒置、疑問文⇒間接疑問文など、この本に書いてある言い換えをスラスラできるようにします。これもできれば上記のようにルーズリーフに左右に書いて言い換えの訓練をするのがオススメです。
3.復習
3.1.復習の重要性
普通の高校生がやっているように、1章ずつ暗記し、復習せずに数ヶ月で1冊終えても、前半をかなり忘れているので、当然、2周、3周する必要があり、いつ終わるか分かりません。たいてい、途中で挫折したり、中途半端な暗記で教材をやらなくなります。
一方、創賢塾で教えているように、1章分を5周して「スラスラ訳せる、文法的に解説できる、問題をスラスラ解ける状態」にすれば、復習に時間がかかりませんし(1章当たり10~15分)、復習しつつ先に進めれば、1冊を終えた時点でほぼ全部暗記しているので、次の問題集に行けます。
どちらの勉強法が優れているかは歴然です。面倒でも復習しつつ先に進めて下さい。
3.2.復習が追いつかなくなったら。
忘れないように復習しながら先へ進めていくと、当然ながら、復習量がどんどん増えていき、それにつれて復習時間も増やすしかありません。そのとき、たいていの人は復習時間を削って先に進もうとし、失敗します。前の部分をどんどん忘れていくからです。
ではどうすれば良いのかというと、先に進むのをいったん止めて、1~3週間を「復習週間」にし、完璧に暗記してからまた、先に進めば良いのです。そうすれば復習に時間がかかりません。
4.その後
(1)大学入試英文法問題集:「集中12日間! 英文法のいちばん大事なところ」の本全体の1周目が終わったら、その復習をしながら、以下のような、解説が詳しい大学入試英文法問題集を1冊習得します。
「世界一わかりやすい 英文法・語法の特別講座」(関正生著、角川)
「スクランブル英文法・語法」(旺文社)
(2)英文解釈書:以下のような英文解釈書に入ります。
「入門英文解釈の技術70」「基礎英文解釈の技術100」(CD付き、桐原書店)
「英文読解入門基本はここだ!」「ポレポレ英文読解プロセス50」(西きょうじ著、代々木)
「英文解釈」とは、大学入試に出る、難解で理解しにくい英文を網羅的に載せた「英文解釈書」で、英文にSVOCMを振り、和訳を書くトレーニングのことです。今の高校生は英文解釈のことを知らない人も多いですが、大学入試の難しい英語長文を読めるようにするには英文解釈は必須です。
【終わりに】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
この文章が、あなたのお役に立てれば幸いです。
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