国語勉強法(1)論理的思考力を身に付ける方法

論理力とは、論理的思考力をベースにして、論理的に読み、書き、話すことができる能力のことです。論理的思考力や論理力は中学~大学入試で絶大な力を発揮します。

このページでは論理的思考力と論理力を身に付ける方法を解説していきます。

1.論理とは何か

1.1.「論理」とは何か

 (1)「論理」とは筋道・要約のこと

「論理」とは文章(思考・話)の筋道、流れ、構造のことです。筋道とは要点の流れ、要点と要点の関係のことです。
「要点の流れ」とは「要約」のことなので、正確な要約ができればその文章の論理が分かります。よって、要約トレーニングは論理力を身に付ける重要なトレーニングなのです。

 (2)筋道の例

演繹型:「テーマ⇒主張⇒根拠⇒結論(主張)」
    「問題⇒問題解決(主張)⇒根拠(理由・説明・例示)⇒結論(主張)」
    「テーマ⇒主張⇒根拠⇒反対意見⇒反駁⇒結論」
帰納型:「根拠(具体例・体験)⇒主張」など。

1.2.「論理的」とは何か

 (1)「論理的」とは型と妥当性があること

「論理的」とは、文章(思考・話)がしっかりとした「構造=型」で組み立てられており、かつ、その論理や主張に「妥当性」があることです。言い換えれば、文章の筋道が一貫しており、矛盾なく、論理の飛躍がない状態で、かつ、説得力があることです。

「主張に妥当性がある」とは、「その主張が有効であり、適切であり、実情に合っている」ということです。
文章が論理的であれば、筋が通っていて、分かりやすく、説得力があります。

 (2)論理的文章の「構造=型」の例

「テーマ⇒主張⇒根拠⇒結論」
「問題⇒問題解決⇒理由⇒説明⇒例示⇒結論」
「テーマ⇒主張⇒根拠⇒反対意見⇒反駁⇒結論」
「体験⇒具体例⇒まとめ⇒主張」など。

1.3.「論理的思考力」とは何か

論理的思考力とは、
物事を筋道立てて考え、妥当性のある考えを導くことができる能力、
一定の方式に従って考え、妥当性と説得力のある結論を導ける能力、
一貫して筋が通っており、矛盾がなく論理の飛躍がない考えを導ける能力、
考えるときにきちんと構成を考えながら、説得力のある考えを導くことのできる能力です。

1.4.「論理力」とは何か

論理力とは、論理的思考力をベースにして、論理的に読み、書き、話すことができる能力のことです。
以下では、論理力の中で中学入試に最も関係のある「論理的文章を論理的に読み、書く」ことに焦点を当てて話を進めていきます。

【第一志望校に合格しました!】

Oさん(小学6年生、愛知県、第一志望校・南山中学男子部に合格)

今まで勉強を続けてきて、国語に加えて他の3科目の勉強法も教えていただいたのが、4科目全体の成績を上げる効果があったと改めて感じます。国語は偏差値37~39前後が58~60前後に、算数は50前後が60超に、理社も45~50前後が60超に上がりました。

ご指導の中心であった国語では記述力が上がった事は勿論ですが、選択肢問題においても選択肢の一つ一つを部分的に区切って吟味するという習慣を、マンツーマンで見ていただいたことにより身につけたようです。

また、意味のわからない語句を調べるよう言われ、辞書を引く習慣をつけることにより、語句の意味と漢字の関連を確認できました。その結果、漢字テストで知らない熟語が出ても、文章全体から熟語の意味と漢字を推測し、正しい解答を得られるようになってきました。

先生のご指導のお陰で成績に不安を抱かなくて済むようになり、感謝しております。 入試本番まであと少しですが、引き続きよろしくお願い致します。

P.S.お世話になっております。

おかげさまで第一志望の南山男子部に無事合格できましたのでご報告いたします。

南山男子部の他、愛工大名電中(特奨)、愛知中、名古屋中にも合格しました。

1年前、国語が特に苦手だったことがきっかけで個人指導をお願いする事になりました。南山の過去問を複数年度にわたりご指導いただけたことで、安心して入試に臨むことが出来たように思います。入試の前日には、先生から以前送っていただいた読解のポイントのルーズリーフをよく読み込んでいました。

1年間お世話になり、ありがとうございました。

2.論理的文章には「型」がある:演繹型と帰納型

論理的な文章には特定の型(構造)があり、それは主に、「演繹型」か「帰納型」に分けられます。

2.1.演繹型:「主張-根拠」、「主張-根拠-主張」

演繹型とは、「主張-根拠(最初に主張を述べて、その後、説明・具体例などの根拠を述べる論の進め方)」のことです。
欧米系の論理的文章は基本的にこの型で書かれています。

論説文や説明文、評論文ではたいてい、最後に結論を書くので、「主張-根拠-主張」という変形演繹型になります。最後に書かれた主張は普通「結論」と言われます。つまり、結論と主張は同じです。

2.2.帰納型:「根拠-主張」

帰納型とは、「根拠-主張(最初に具体例・体験などの根拠を述べて最後に主張を述べる論の進め方)」のことです。
日本人の文章は、最初に結論を書かず、最後に持ってくる傾向があります。よって、試験に出る問題文には帰納型が多い。

2.3.論理的文章に「型」がある理由

論理的な文章(論文、評論文、論説文、説明文、小論文など)はたいてい、演繹型か帰納型のどちらかの型を取ります。なぜなら、このような型にのっとって書くと、分かりやすく説得力があるからです。

論理的な文章はもともと、不特定多数の人に、自分の主張を知らせ、納得してもらうために書きます。読者に納得してもらうには、はっきりした主張と、誰でも納得できる根拠が必要なのです。

3.論理的文章には「パーツ」がある

論理的な文章には型がありますが、その型には「テーマ・主張・根拠」という3つのパーツ(部品、構成要素)があります。
内容的には「根拠」は「主張」の補強なので、根拠の重要性は主張よりも低くなります。よって、根拠は軽くサッと読み流し、主張はじっくり読みます。主張には線を引き、記憶しながら読みます。

根拠は重要ではありませんが、量的には多く、全体の7~8割は根拠です。

(1)テーマ:テーマ(主題、話題)とは「何に関して書かれているか」ということです。テーマは、「日本」とか「環境問題」などの大きな単語ではなく、「日本と西洋の関係」「オゾン層破壊と地球の未来」などの少し具体的なフレーズになります。「日本」や「環境問題」全体を論じることはマレで、日本や環境問題のある側面を論じることがほとんどだからです。

(2)主張:主張とは、テーマや問題に対する著者の考え・意見です。通常1つの論説文には1つまたは2つの主張しかありません。50行や100行あっても、主張は1つか2つです。よって、その1つか2つの主張を探して読めば、全体で言いたいことが分かります。主張は1文か2文なので、量的にはわずかで、ほとんどが「根拠」になります。
文章の最後に書かれた主張は「結論」と呼ばれます。

(3)根拠:ここで言う「根拠」とは、筆者の主張を補強するために書かれる内容の総称です。
根拠には、「理由、説明(理由の詳述)、定義・分類、例示・具体例、科学的データ、引用、体験談、対比、比喩、因果関係、予想される反論とそれへの反駁(譲歩)、時系列変化」などの種類があります。
「ここは理由が書かれている、ここは言葉の定義だ、ここは具体例でここは体験だ、ここは対立関係で、ここは譲歩が使われている」と、根拠を分類し名付けることができるようになれば、文章をより俯瞰的・論理的に読めていることになります。

4.論理的文章には3つの論理関係がある

文と文、段落と段落の間には、主に3つの論理関係があります。それは、「イコールの関係、対立関係、因果関係」です。文章を読んだときにこれらを読み取ることができれば、文章の流れが分かり、何が重要か分かります。つまり、論理的な読み方ができるようになります。

4.1.イコールの関係

論理的な文章の「テーマ・主張・根拠」の3つで構成され、テーマは一言で言える内容ですから、文章のほとんどは「主張と根拠」です。
根拠(具体例、体験、引用等)は全て「主張を補強するため」に書かれますから、根拠と主張の言いたいことは同じです。つまり、論理的文章は基本的に1つの主張の言い換えから成り立っています。また、重要なことは繰り返し、別の言葉で言い換えられます。これらはイコールの関係の例です。

対立関係と因果関係以外はたいてい、イコールの関係です。

4.2.対立関係

論理的文章には、敢えて反対意見を採り上げたり(譲歩)、日本人の特質を明確にするために欧米人と比べたり(対比)します。これらを「対立関係」と言います。
ただ、反対意見を採り上げるのは、その反対意見を論破するためであり、重要なのは反対意見ではなく、自分の主張です。また、日本人と欧米人を比べるのは欧米人の話をしたいがためではなく、「日本人の特質を明確にするため」です。つまり、より重要なのは日本人に関する主張です。

結局、対立関係も、役割から考えると、主張とイコールの関係、主張の言い換えと言うことができます。

4.3.因果関係

「ゆえに、したがって、だから、そこで」などは因果関係を示しす接続語ですが、「前が原因(理由)で後が結果」です。逆に、「なぜならば、というのは」も因果関係を示す接続語ですが、「前が結果で後が原因(理由)」です。
原因(理由)と結果のどちらが重要かというと、結果です。

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5.論理力を身に付ける方法

論理力とは、論理的に考えることができ、論理的に読むことができ、論理的に書くことができる能力なので、これらを分けて書いていきます。

5.1.論理的に読めるようにするトレーニング

 (1)型とパーツを判別して読む

論理的に読めるようにするには、演繹と帰納という論理の型と、そのパーツである「テーマ・主張・根拠」を理解し記憶し、読むときに、「ここはテーマが書かれている、ここは具体例・体験・引用・対比で、これらは根拠だから重要性は低い、ここは主張だからここが一番重要」などと判別しながら読むトレーニングをすることが必要です。

これは本文解説の詳しい良質の問題集には書かれていますので、例えば以下のような問題集を使ってトレーニングしていきます。

「出口の小学国語レベル別問題集」シリーズ(ナガセ)

普通の生徒の文章の読み方は「平板」です。1行目も10行目も最後の行も、平板に読んでいます。どこがどういう役割か分からず、どこが重要か重要でないかも分かりません。

それに対して、論理力がある人の読み方は、「俯瞰的・鳥瞰的」です。鳥が上空から地形を見れば地形が手に取るように分かるように、論理力のある人が文章を読めば、どこが高く(重要で)、どこが低い(重要でない)か、どこに何(テーマ・主張・根拠)があるかが、手に取るように分かるのです。これは、上に書いた型とパーツを区別するトレーニングで身に付けることができます。

 (2)判別読みを「5回×30文」トレーニングする

このような論理的な読み方を、1文で5回繰り返せば、その文は論理的に読めるようになり、更に、10文、30文と習得し続ければ、無意識のうちに論理的な読み方ができるようになります。そうなれば、初見の文章でも論理的に読めるようになります。

具体的には、論理的に本文を読む方法を詳述した以下のような問題集を3~5冊、一つ一つ習得していく必要があります。

「出口の小学国語レベル別問題集」シリーズ(ナガセ)
「システム中学国語」シリーズ(水王舎)
「中学生版 出口の国語レベル別問題集」シリーズ(ナガセ)

5.2.論理的に書けるようにするトレーニング

以下のようにすれば論理的に書けるようになります。

(1)2つの論理の型と3つのパーツを理解し記憶し、
(2)沢山の論理的な文章を読んで解析して、演繹型と帰納型が実際に機能していることを確かめる、という論理的読解トレーニングをすると共に、
(3)型とパーツを意識しながら多数書くことが必要です、更に、
(4)自分の文章を読み返して、「文章内容が矛盾なく、一貫しており、論理の飛躍がない」状態に推敲するトレーニングも必要です。

ただ、論理的に書くといっても、40字程度の記述問題か作文かによって対策法は変わります。

40字程度の記述問題であれば、たいていは、本文からキーワードとキーセンテンスを見つけて組み合わせれば書けますから、本格的な記述対策は不要で、要約トレーニングで対処できます。以下の要約問題集が役立つでしょう。

「国語の読みテクトレーニング 説明文・論説文」(文芸社)

中学入試の作文であれば以下のような受験作文対策問題集をすれば良いでしょう。

「公立中高一貫校をめざす適性検査対策問題集」(文理)
「作文力で合格! 公立中高一貫校 適性検査対策問題集」(朝日学生新聞社)

本格的に論理的に書く方法を学びたければ、以下のような大学入試の小論文対策問題集を使って、書く練習をしていきます。

「吉岡のなるほど小論文講義10」(桐原書店)
「出口小論文講義の実況中継1&2」(語学春秋社)
「出口の好きになる現代文 小論文対策編」(水王舎)
「樋口裕一の小論文トレーニング」(ブックマン社)

5.3.論理的思考力を培うトレーニング

論理的思考力は、以上に述べた、「論理的に読み、書く」トレーニングを続けることで身に付いていきます。特に「論理的に書く」トレーニングは必須です。なぜなら、「論理的に読む」のは受動的で、曖昧な理解でも可能ですが、「論理的に書く」のは、「論理的に考える」のと同様、自分で能動的に論理を構成しなければならないからです。

論理的思考だけを培うのは難しいです。なぜなら、思考は書いたり話したりして「形」にならない限り、とらえどころがなく、訂正・修正・矯正が難しいからです。よって、「論理的に読み、書く」トレーニングを続けていきましょう。

6.論理的思考力&論理力は何の役に立つのか

6.1.論理力が身に付けば国語の成績が上がる

論理力とは、論理的に考え、書き、読み、話せる能力の総合力です。

論理力が身に付けば、論理的な文章(論説文・説明文・随筆文・論文)の要点や筋道を把握できるため、内容把握が上手になります。また、要点(重要な部分)をじっくり読み、重要でない部分をサッサと読むことができるようになるので、速読ができ、要点を記憶できます。そして、要点こそが問題に出るので、正答率も上がります。

物語文でも、全ての問題で「根拠を持って答える」必要があるので、根拠を探し、見つけ、それを元に答えるという論理的な解法を身に付ければ、正答を導けます。
また、論理的に考えて書くことができれば設問の趣旨を外さず、的確に、論理的に書けるようになります。
よって、国語の成績が上がります。

6.2.論理力は中学受験・高校受験・大学受験で役に立つ

論理力は中学受験に役立つだけでなく、高校受験・大学受験でも当然役に立ちます。それは国語(現代文)だけでなく、全教科で役立ちます。なぜなら、例えば、英語は日本語よりも論理的な言語なので、論理的に考え、読み、書くことができれば内容把握が楽になるからです。また、英語以外の全科目は日本語で書かれているので、論理力によって日本語力(国語力)が上がれば問題を解く能力、記述問題を書く能力が上がるからです。

6.3.論理力のある人は大学で高い評価を得る

大学はレポートや論文を書き、討論をする場です。そこで最も重要なのは「自分の意見を論理的に書く力、論理的に話す力」です。よって、論理力を持つ人は大学でこそ輝きます。

大学生・大学院生・学者は、最終的には全て「論文」で評価されます。論文は、文字通り、論理的に書かなければなりませんから、論理力がなければ、評価は低くならざるを得ません。大学入学まで論理的に書く訓練をしなかったために、論理的に文章が書けず、大勢の大学生は苦戦しています。あなたはその轍を踏まないようにしてください。

また、大学のゼミでは討論が行われます。そこでは自分の意見を述べ、その根拠を幾つか挙げて、聞いている人を納得させなければなりません。ここで必要なのはまさに論理力です。

6.4.論理力があれば仕事で断然有利になる

仕事は主に「話すことと書くこと」で成り立っています。例えば、顧客と交渉し、プレゼンで説得し、会議で自分の意見を整然と分かりやすく述べる必要があります。また、報告書や企画書を論理的に、簡潔明瞭に書く必要もあります。

あるいは研究職であれば論理的に考えて実験をし、研究成果を論文にまとめ、上司・取引企業・研究者等の前で論理的に発表する必要があります。
これら全ての土台は論理力なので、論理力があれば仕事で断然有利になります。

6.5.問題解決能力が高まる

論理力のある人は、物事を整理するのが得意です。例えば、問題が発生したときに、問題の原因・結果・解決策を論理立てて考え、列挙する。原因はこの3つで、この3つの結果が考えられ、解決策の選択肢はこの4つで、このうちこれがこういう理由で最も有効だ、というように。こういう思考ができれば、速やかに問題を解決することができます。

7.終わりに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

皆さんの参考になれば幸いです。

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