中学生が数学を得意科目にするには、暗記数学と思考数学、口頭再現法と長期記憶に入れる復習法という4つの勉強法がカギになります。ぜひこれらの勉強法をマスターして、数学を得点源にしてください。
1.暗記数学
1.1.暗記数学の5つの核心
暗記数学とは、従来の2倍以上の効率で数学の成績を引き上げることのできる勉強法のことです。暗記数学の核心は以下の5つです。
【暗記数学の5つの核心】
(1)解法を知らなければ解けない:私たちが数学の問題を「考えている」とき、実際には「考えている」のではなく、たいていは「解法(解き方)を思い出そうとしている」に過ぎない。つまり、解法が頭に入っていなければ解けないし、解法を覚えれば解けるようになる。
(2)解法暗記:高校入試に出る数学の問題には、有限の数の典型問題(パターン問題)とその解法があり、それらの典型問題の解法を理解して暗記したら、典型問題と類題は解けるようになる。
※典型問題とは、教科書や、「チャート式 基礎からの中学数学」(数研出版)などの網羅系問題集の例題です。
(3)5分以上考えない:有限といっても、高校入試に必要な典型問題の数は150~200前後あるので、時間のない中学生が1問を15分、20分と考えていたら、いつまでも終わらない。よって、解けそうにない問題は5分程度で切り上げて解答・解説を見、理解し記憶する。
(4)再度解き直す:解答解説を読んで理解したあと、数学が得意な人はすぐに再度解き直すが、不得意な人は解き直さず、次の問題へ行く。他人の解答を理解できるのと、自分で解けるのは違うのだから、解答解説を理解したら、すぐに再度解き直すのが成績を上げるコツ。
(5)典型問題を全問スラスラ解けるまで復習する:2~3回復習しても短期記憶(数日~数週間で忘れる記憶)にしか入らず、1~2ヶ月たったら解けなくなる。それでは解いた意味がなく、入試には役立たないから、典型問題はすべて長期記憶(数ヶ月~数年持つ記憶)に入るまで復習を続ける。
長期記憶に入った目安は「問題を見たら解き方をスラスラ言える状態」。復習回数の目安は5~10回。
1.2.典型問題集
典型問題集には以下のようなものがあります。
「チャート式 基礎からの中学数学」「チャート式 体系数学」シリーズ(数研出版)
「高校受験入試によくでる数学 標準編」(佐藤茂著、ニュートンプレス)
「基本のカギだけで解く入試数学」(石田浩一著、学習研究社)
「語りかける中学数学」(高橋一雄著、ベレ出版)
2.思考数学
2.1.暗記数学から思考数学へ
数学の成績を決定づけ、合格を左右するのは、応用問題や難問です。ここで、応用問題とは、複数の解き方を使わないと解けないような問題であり、難問とは、典型的な解き方を使うだけでは解けず、新たに解き方を自力で思いつかないと解けないような問題を指します。
応用問題・難問を解けるようにするには「応用力(知っている解法パターンを組み合わせて正解を導ける能力)」や数学的思考力を伸ばすことが必要です。
「応用力・数学的思考力」を伸ばし、入試で合格点を取れるようにするには、暗記数学で典型問題の解法を暗記した上で、応用問題や難問をとことん考える勉強が不可欠です。
これを「思考数学」と言います。
2.2.思考数学のポイント
思考数学のポイントは以下の4つです。
【思考数学の4つのポイント】
(1)10~15分徹底的に考える:考える時間を、5分から、応用問題は10分、難問は15分程度に延ばして、とことん考える。
(2)手を動かして解く:「とことん考える」とき、ただ考えるだけでなく、絶えず手を動かし、図やグラフを書き、思いつく解き方を一つ一つ試していく。
(3)解法暗記:10~15分で分からなければ解答解説を読んで理解し、解法を暗記する。その後、すぐに再度解いて自力で解けるようにする。
(4)過去問は30分考える:過去問では考える時間を更に増やし、1問に20~30分かけても良い。これで数学的思考力が磨かれる。
2.3.応用・難問問題集
高校入試の応用・難問問題集には以下のようなものがあります。
「チャート式 基礎からの中学数学」(数研出版)
「塾で教える高校入試 数学 塾技100」(森圭示著、文英堂)
「高校受験入試によくでる数学 有名高校編」(佐藤茂著、ニュートンプレス)
「高校入試1対1の数式演習」「高校入試1対1の図形演習」(東京出版)
「入試を勝ち抜く数学ワザ52」(谷津綱一著、東京出版)
「解法のスーパーテクニック」(小島寛之著、東京出版)
「早慶への数学分野別問題集」(SAPIX、代々木ライブラリー)
「受験生の50%以下しか解けない 差がつく入試問題 数学」(旺文社)
「数学難関徹底攻略700選」(東京学参)
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3.長期記憶に入れる復習法
3.1.成績を上げる勉強法のキーワードは「長期記憶」
創賢塾の勉強法指導の根幹にあるのは「どうやったら勉強内容全てを長期記憶に入れられるか」です。
「長期記憶」とは、数ヶ月以上忘れない記憶です。勉強をいくらやっても、長期記憶に入れていなければ、1ヶ月もすれば多くを忘れてしまうので、無駄が多い勉強法になります。
3.2.長期記憶に入った印:スラスラ状態
長期記憶に入った印は、
数学や物理では「問題を見たら解き方をスラスラ言える状態」、
英語では「教科書をスラスラ訳せる」「教科書を暗唱できる」「英文法問題集の答えを即答できる」「英単語帳の英語⇔日本語訳を即答できる」、
理科・社会では「答えを即答できる」、「問題を見たら解き方をスラスラ言える状態」、
古文・漢文では「現代語訳をスラスラ言える」「教科書を暗唱できる」です。
これら全てをまとめて「スラスラ状態」と呼んでいます。全ての教科で「スラスラ状態」を目標に勉強していくのが成績を上げるコツです。
3.3.長期記憶に入れ、スラスラ状態にするメリット
(1)定期テストで成績が上がる:テスト範囲の全ての問題をスラスラ状態にすれば、類題がスラスラ解けるようになり、応用問題に時間を使うことができます。その結果、テストの点が上がります。
(2)応用問題が解けるようになる:「応用問題」とは、「典型問題の解法を複数組み合わせて解く必要のある問題」です。よって、ほとんどの典型問題の解法をスラスラ思いつけるようにすれば、応用問題も解けるようになります。
(3)模試の成績が上がる:勉強内容を長期記憶に入れられれば、数ヶ月以上忘れないので、実力が上がり、実力テストや模試の成績がどんどん上がります。
(4)勉強が楽しくなる:2~3回の復習では、必死で考え、苦労して解かないといけないので勉強がつらくなりがちですが、スラスラ解けるようになれば、当然、勉強が楽になり、楽しくなります。
3.4.スラスラ状態になるまでの回数
数学の問題集全部を「スラスラ状態」にし、長期記憶に入れるには、偏差値70以上の高校生で3~5回、それ以下の人で5~10回必要です。
10回復習すればほとんどの人で長期記憶に入るので、創賢塾では【復習は10回】と指導しています。
ただし、後述の「口頭再現法」を取り入れれば3~5回の復習でスラスラ状態にできます。
3.5.復習10回は、復習3回に比べて、時間対効果は3倍
「復習10回」といっても、復習3回のときと、かかる時間ははたいして変わらず、効果は3倍以上です(※3ヶ月後の時点で3倍以上覚えている)。つまり、時間対効果(同じ時間でどのくらいの効果があるか)は3倍前後あります。
※復習が3回のときは短期記憶にしか入らず、2~3週間から忘れ始め、3ヶ月で7~8割前後を忘れますが、10回復習すると、長期記憶に入り、数ヶ月~数年、記憶が持ちます。
成績がいい子はみんな「10回くらいはやっている」
「きめる!共通テスト現代文」(船口明著 406ページ、学研)
先日ある生徒が落ち込んだ顔で僕を訪ねてきました。「理科が苦手で、どうしても成績が上がらないんです……」。彼はこう言います。「テキストは復習して内容は理解してます」「問題集で演習もしました」「それなのに上がらない」と。
僕は聞きました。「問題集は何回やったの?」。「項目にもよりますが、間違ったところは2回、解けたところは1回です」。なるほど。そりゃあそうです。それでは成績が上がるわけがありません。
勉強は「繰り返し」で成績が上がっていくものです。
かつて、ある超難関国公立大の医学部に現役合格した女の子は言いました。「私は『天才』なんかじゃないんです。K君みたいに、授業の復習をして問題集を1回解いただけで出来るようになるっていう子もいます。ああいう子は確かに天才です。でも私、理科も数学も10回くらい繰り返して、やっとできるようになるんです。だから私は天才じゃありません。」
僕は「はっ」としました。彼女はずっと全国模試の成績が一ケタ台だった子です。正直、そこまで繰り返しているとは思っていなかった。でも、彼女は、「10回やって」その順位にいたんです。しかも彼女は、周りの友達も、成績がいい子はみんな「10回くらいはやっている」って言うんです。
どうでしょう。皆さんは「天才の勉強法」になっていませんか。
才能がないんじゃない、繰り返しが足りないだけです。だからできないと嘆く前に、何度も繰り返す。5回やってダメなら10回やればいい。10回でダメなら15回やればいいんです。
3.6.復習3回と10回で、かかる時間はたいして変わらない
復習時、初回⇒2回目、2回目⇒3回目の時間比率はだいたい5~7割、平均6割くらいです。5回目⇒6回目のときも同じ6割くらいです。これをまとめると、かかる時間は以下のようになります(1周目に10時間かかったとして)。
【1回目10時間⇒2回目6時間⇒3回目3.6時間⇒4回目2.2時間⇒5回目1.3時間⇒……10回目0.1時間(6分)≒合計25時間】
3回目までにかかる時間は約20時間、4~10回にかかる時間は約5時間です。復習3回と10回では、時間はほとんど変わらないことがお分かりになるでしょう。よって、復習10回はやらないと損なのです。これについては詳しくはこちらに書いています。
3.7.長期記憶に入らない勉強法
(1)「覚えては忘れ、覚えては忘れる勉強法」では成績は上がらない
普通の中学生の数学問題集の復習回数は2~3回ですが、これくらいでは、長期記憶(数ヶ月以上忘れない記憶)に入らないので、数ヶ月もすると3~5割以上忘れます。
こういう勉強法を私は「覚えては忘れ、覚えては忘れる勉強法」と呼んでいます。数学や英語は「積み上げ型」の科目で、前にやったことを覚えていないと後の内容が理解しにくくなり、記憶もしにくくなります。よって、このような勉強法では、成績はなかなか上がりません。
(2)「一気に勉強し、一気に忘れる勉強法」は敗者の勉強法
定期テスト前2~3週間に一気に勉強し、2~3回しか復習しない勉強法をしている人は、テストが終われば速やかに忘れるので、定期テストはごまかせても、実力テストや模試の成績はふるわず、入試での成功は厳しくなります。
皆さんはぜひ、長期記憶に入れる勉強法をしていってください。
4.口頭再現法
4.1.数学の復習回数を半分に減らせる画期的な勉強法
口頭再現法は、1回の復習で2~3回分の効果のある優れた勉強法です。試しに1週間やってみてください。その効果に驚くはずです。
4.2.口頭再現法の実際
【口頭再現法:数学の解き方を口頭で再現する復習法】
【口頭再現法:数学の解き方を、口頭で、最初から最後まで4回前後再現する⇒すぐにスラスラ解けるようになる】
(1)初回:解けなかった問題を解いたあと、解き方を口頭で再現する
初回、通常通り、書いて解く⇒解けなかった問題の解答解説を読み、理解する⇒再度解く⇒解けた
⇒【口頭で、解き方を、最初から最後まで再現する】×4回前後
⇒【スラスラ、よどみなく、最初から最後まで、口頭で再現できる状態】にする。
(2)復習のたびに口頭で再現する
復習時は、初回や前回までに解けなかった問題を書いて解く⇒最終的に解けた
⇒上記の通り4回前後、口頭で解き方を再現する
(3)最終的に全問題を「問題を見たら解き方がスラスラ口頭で言える状態」にする
口頭再現法を使えば3~5回前後の復習でスラスラ状態になる。
4.3.口頭再現法のコツ
(1)最初は解答を見ながらで良い:最初は、解答を100%見ながらでも良いし、詰まったときにチラチラ見るのでも良い。
(2)最終的にスラスラ状態にする:復習のたびに、4回前後口頭で再現して、「100%自力で、スラスラ再現できる状態」まで行うことが重要。たどたどしい状態だとすぐ忘れるから。
(3)4回前後:「スラスラ再現できる状態」にするのにかかる回数は、問題の難易度や個人の数学力にもよるが、3~5回前後。
(4)書いても良い:解くのに必要なら、図やグラフを書く。
(5)理解:記憶で再現するのではなく、あくまでも、理解しながら再現する。
(6)外す:2回連続で解けた問題は外していく。
【口頭再現法で偏差値が10以上、上がりました】
Hさん(中学3年生、宮崎県)
創賢塾で全教科の勉強法を教えて頂き、どの教科においても理解し、繰り返し何回も復習することが大切であることを学びました。
数学の口頭再現法では、人に説明するように答えを言うことを何回も繰り返しすることで、解き方を理解するとともに、記憶に定着して曖昧な部分がなくなりました。
教材を沢山使い多くの問題を解く勉強をしていましたが、先生からひとつの教材を完璧にする方が効率が上がり、テストの点も上がると教えていただきました。実際に「チャート式中学数学」と口頭再現法だけで模試の偏差値が10以上、上がりました。
4.4.口頭再現法のメリット
(1)深い記憶:4回前後の口頭再現法により、解き方が深く記憶に入り、復習時の負担が激減する。
(2)より少ない勉強時間でマスターできる:目標の「問題を見たら解き方がスラスラ言える状態」になるまで、通常、復習は5~10回必要だが(回数は問題の難易度・数学の実力による)、口頭再現法を取り入れると、その半分の復習回数で達成できる。その結果、マスターできるまでの総時間が30~50%削減できる。
(3)短時間:口頭なので短時間で何度も繰り返せる。
5.終わりに
以上、数学の成績を一気に上げられる4つの勉強法でした。これらのうち1つでも取り入れれば同じ勉強時間で効率よく成績を上げられるようになります。
あなたの健闘を祈ります。
創賢塾のホームページに書かれた勉強法をいち早く習得したい中学生のために【5教科のテスト勉強法を習得する3ヶ月自宅集中セミナー】を開催しています。【中学生用:長期勉強法コース・短期セミナー一覧】はこちら。関心ある方はご参照ください。