中学入試の作文上達法(7)作文を合格レベルにする5つの勉強法

このページでは、中学入試の作文を上達させたいときに有効な5つの勉強法について、詳細に書いていきます。

1.大量に書く

1.1.100作文書く

作文は、10回~20回程度書いても、それほど上達しません。

よって、創賢塾では、志望校に作文のある受験生には、6年の10ヶ月で100作文を書くように指導しています。100文くらい書いたら、合格点レベルの作文を速く書けるようになるからです。

では、どうやったら100も作文を書けるのか。それには以下のような2つの勉強法を創賢塾では使っています。

1.2.100作文書くための勉強法(1)模範解答をまねて書く

普通の受験生はゼロから自力で頑張って書いていると思いますが、全て自力で書こうとすると、時間も労力もかかりますから、週1~2つが限界でしょう。

しかし、過去問の模範解答を見て、その文章構造を使い、中身を30~80%以上変えて書くなら、全部自力で発想する必要がないので、書く敷居が低くなり、書きやすくなります。

これは創賢塾で創った作文上達法で、換骨奪胎法と言います。詳しくは【中学入試の作文上達法(2)作文最速上達法】参照。

なお、練習には最初から過去問を使うことを強くオススメします。課題の傾向によって文章構成法・内容は違ってくるからです。

1.3.100作文書くための勉強法(2)過去問10年分×10回書く

毎回違う課題を書いていたら、大量に書けません。

創賢塾では、「過去問10年分×10回」「過去問20年分×5回」のように、同じ課題を何度も書いてもらっています。

 ※過去問の年数が足りない場合、「(過去問5年分⇒模試・問題集から5回分)×10回」のように過去問に傾向が似た課題の模試・問題集も使います。

そうすることで、大量に書けるのと同時に、過去問の傾向・過去問作文の文章構成法・志望校入試で合格レベルの作文を書けるようにするには何が必要か、などが分かってきます。

2.文章構成法を習得する

2.1.文章構成法とは

文章構成法とは、「最初何を書いて、次に何を書いて、最後何を書くか」ということです。

例えば、「主張⇒理由⇒説明⇒体験談・具体例⇒結論」などです。

入試に作文がある中学受験生が作文練習を始めて一番困るのが、この文章の構成法が分からないということです。

2.2.文章構成法が分からない理由

中学受験生が、入試作文の文章構成法が分からない主な理由は以下の5つです。

(1)習わなかったから:学校でも塾でも、作文の文章構成法などほとんど教えません。習っていないのだから、分からないのは当たり前です。

(2)習得するのが難しいから:作文をたくさん書いても、たくさん添削してもらっても、文章構成法を教わったとしても、文章構成法はなかなか習得できません。

 5~10回書いたくらいでは無理で、20~30回以上、書いて、添削してもらい、文章構成法を教わって、やっと慣れていきます。

(3)万能な文章構成法はないから:一つの文章構成法(例えば、主張⇒理由⇒説明⇒体験談⇒結論)で全ての作文をカバーできず、作文の課題によって文章構成法は変わります

 よって、いろいろな中学の課題・いろいろな種類の作文課題で練習していると、文章構成法はいつまでたっても習得できません。混乱するだけです。

 したがって、志望校の過去問で練習することが重要なのです。

(4)文章構成法を習得する勉強法を誰も知らないから:塾の講師も親御様も中学受験生も、文章構成法を習得できる勉強法を知りません。

 作文本や塾の作文教材には文章構成法が載っているかもしれませんが、それを読んで文章構成法を習得できる中学受験生はほとんどいません。塾の授業や映像授業で文章構成法を習っても、それを自分の作文にどう生かすかを考えられる中学受験生もほとんどいません。

(5)抽象的思考力が必要だから:作文を書くとき、主張・理由・説明・体験談という抽象的な言葉から、具体的な内容を書くためには、また、模範解答や自分の作文を読んだり、文章構成を分析するときに、「ここは主張、ここは理由、ここは体験談を書いている」「ここは重要、ここは重要でない」と理解できるためには、抽象的思考が必要です。

 抽象的思考とは、具体的な物事や事象から抽象的な概念や原理を導き出す能力、また、具体的な経験や事実から一般的な原理やパターンを見いだし、それらを適用して新しいアイデアや解決策を考え出す能力のことです。

 つまり、作文で必要な抽象的思考とは、模範解答や課題文という具体的な文章を読むとき、高い視点から俯瞰的に見て、主張・理由などの抽象的な概念で把握する能力、そして、逆に、作文を書くとき、主張・理由・説明・体験談という抽象的な言葉から、具体的な内容を書く能力です。

 小学6年生だと、まだ抽象的思考があまり発達していない人が多いので、文章構成法をすぐには理解できないのです。

2.3.文章構成法を習得する勉強法

では、課題に合った正しい文章構成法で書けるようにするにはどうしたら良いでしょうか。それには以下の6つの勉強法が役立ちます。

(1)換骨奪胎法:模範解答の文章構成や内容をまねて大量に書く。
(2)模範解答と自分の作文の文章構成を分析し、比較する。
(3)課題から、どういう文章構成にすべきなのかを分析する。
(4)模範解答を暗記する。
(5)書籍やテキストで文章構成法を勉強する。
(6)文章構成の観点から添削してもらう。

これらを自力で実践する場合は【中学入試の作文上達法(3)上級編】参照。

添削者がいる場合は【中学入試の作文上達法(5)添削徹底活用法】参照。

3.記述力を高める

3.1.記述力とは何か

中学入試の作文において必要な記述力とは以下の3つです。

(1)量を書く能力
(2)正しい日本語で書く能力
(3)論理的に書く能力

以下にそれぞれの養成法を書いていきます。

3.2.量を書く能力

作文を書けと言われても、何も思い浮かばない、一行も書けない、あるいは書けたとしても制限字数にだいぶ足りない、という中学受験生は多いです。

しかし、受験時に限られた時間内で作文を書くには、課題に応じた何かを思いついて、内容はともかくまずは100字、200字と量を書く能力が必要です。これは記述力の一種です。

量を書く能力を育てる勉強法については上述。

3.2.正しい日本語で書く能力

中学受験生~高校生、大人の方の作文・意見文・小論文添削をしていると、日本語の間違いにはパターンがあることに気づきます。

主語と述語が合っていない、主語が2つある、受ける述語がない、係り受けが間違っている、主語や目的語など必要な言葉がない、間違った表現で書く等々。

これらの間違いのない、正しい日本語で書く能力も記述力の一つで、この能力を培うには、以下の3つの勉強が必要です。

(1)大量にインプットする

 頭に入れていないものは出てこないので、大量に正しい日本語を入れることが必要です。具体的な方法は【中学入試の作文上達法(1)パターン別:合格レベルの作文を書く勉強法】参照。

(2)大量にアウトプットする

 正しい日本語を大量に入れるだけでは正しい日本語を書けるようにはなりません。

 上記【換骨奪胎法】で作文を大量に(20~30以上)書く過程で、自分の頭の中にあるアイデアを言語化・文字化し、言葉・表現の組み合わせ・順序を熟慮して書く、そしてそれを並び換え、入れ替え、修正する、というようにすることで、自分の日本語力・記述力が上がっていき、より正確な日本語で書けるようになっていきます。

(3)大量に添削してもらう

 正しい日本語で書けるようにするには、自力ではどうしても限界があります。模範解答を見ても、自分の作文とは全く違うので、自分の作文のどこが日本語的に変か、文法的に間違いか、意味が分からないか、どこをどう直せば良いか、何に気をつけて書かないといけないかなどは分からないからです。

 国語・作文・論理的記述の専門家に、継続的に添削してもらい、書き直し、更に添削してもらう、というプロセスを繰り返すことで、正しい日本語で作文を書けるようになります。

 添削については、詳しくは【中学入試の作文上達法(5)添削徹底活用法】参照。

3.3.論理的に書く能力

作文を論理的に書けるようにするには、以下の3つの訓練が役立ちます。

(1)論理性をチェックする:論理的な作文とは、以下のような作文のことです。

 課題に合った適切な文章構成法で書かれている。
 必要な作文の構成要素(主張・理由・説明・体験談等)が適切な順番で書かれている。
 文と文の間の接続詞が適切に使われている。
 論理が一貫していて終始一つの話(課題への答え・主旨・主張)を書いている。
 根拠(理由・説明・具体例・体験談等)が課題や主張に合致している。
 論理が飛躍・論理が矛盾していない。
 論理が強引でない。
 文法的に間違っていない。
 表現・言葉の使い方が間違っていない。
 内容に重複がない。
 意味が分からない箇所がない。文章が分かりやすい。
 説得力がある。

よって、以上のようなことを、書いているときに意識し、書いた後にチェックする習慣を付けます。

(2)志望校の文章構成法(論理の型)を習得する

 上記「文章構成法を習得する勉強法」で書いたように、模範解答を文章構成法の観点から分析し、それをもとに模範解答をまねて換骨奪胎法で大量に書けば、自分の作文がだんだん論理的になっていきます。

 模範解答の分析については【中学入試の作文上達法(3)上級編】参照。

(3)添削してもらう

 自分の作文が論理的かは、中学受験生には結局よく分からないので、国語・作文・論理的記述の専門家に添削してもらい、どこの論理がどういう理由でおかしいか、どうすれば論理的になるのかを細かくチェックしてもらい、書き直し、更にチェックしてもらうことで、論理的に書けるようになっていきます。

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4.発想力・独創力を鍛える

4.1.発想力・独創力とは何か

作文を書こうとしても、課題に合った適切な内容・具体例を思いつけない受験生は多いです。また、たとえ書けたとしても、誰でも書けるようなありきたりの内容しか書けない受験生も多いです。

これは発想力独創力の問題です。適切な内容を思いつけなかったら、点は取れませんし、誰でも書けるような陳腐な内容を書いても、高得点は望めません。できれば、自分にしか書けない、読み手(志望校の採点担当教師)を感心させるような、独創的な内容を書きたいものです。

4.2.発想力・独創力を高めるには

発想力・独創力を磨くには、以下の3つの勉強法が役立ちます。

(1)模範解答を参考に大量に書く

 模範解答を参考にすれば、具体例や体験談を思いつきやすくなります。よってまずは上記【換骨奪胎法】で大量に書きます。

(2)毎回違う内容を書くよう努める

 換骨奪胎法で大量に書くとき、あるいは同じ課題で2回以上書くとき、同じような内容を書いたら発想力が育たないので、毎回、違う内容・体験・具体例を書きます。

 毎回違う内容を書こうと努め、実際に違う内容を書くことで、発想力が育っていきます。

(3)独創的な内容を書こうと努める

 作文の模試で高得点を取れている方、塾の作文授業や過去問を解いても、一定以上の内容の作文・日本語的に問題のない作文を書けている方には、次のレベルとして、ありきたりでない、自分にしか書けない、独創的な内容を書くよう努めることをオススメしています。

 その心構えをもって書き続けることで、だんだん独創的な内容が書けるようになります。

5.説得力を高める

5.1.説得力とは何か

作文・意見文・大学受験の小論文・大学でのレポート等で、結局、一番重要なのは説得力です。

説得力ある作文とは、読む人を納得させる作文のことです。「なるほどそれは一理ある」「それはその通り」「そうだよね、そうだよね」と思わせる作文です。

逆に、「えっ、どういうこと?」「その論理は無理があるでしょ」「意味が分からない」「この体験談は主張と合っていない」のように引っかかりがある文章は説得力が乏しく、評価は低くなります。

5.2.説得力がない文章の6つの特徴

(1)作文の内容が課題に答えていない:例えば「将来の夢とその理由を書きなさい」という課題に対して、夢ではなく就きたい職業(公務員など)を書いている、理由を書いていないなど、課題に答えていない文章には説得力がありません。

(2)論理的でない:論理が飛躍している、論理が矛盾している、論理が強引で無理がある文章には説得力がありません。

(3)論理一貫性がない:最初の主張と最後の結論が違う内容を書いている、理由・説明・体験・具体例などの根拠が主張と一致していない文章には説得力がありません。

(4)間違っている:文法的に間違っている、表現・言葉・接続詞の使い方が間違っている、意味が分からない文章には説得力がありません。

(5)冗長である:同じ内容を繰り返している、課題・主張と関係の無い内容が書かれている文章には説得力がありません。

(6)抽象的な内容ばかり:体験談や具体例などの具体的な内容がなく、抽象的な内容ばかりの文章には説得力がありません。抽象的内容と具体的内容が適度に書かれている文章が、説得力のある良い文章です。

5.3.説得力を高められる5つの勉強法

ではどうやったら説得力ある作文が書けるようになるかというと、以下の5つになります。

(1)課題を常に意識する:課題に答えていない作文を書く原因は、「課題を見ていない、書いているうちに課題を忘れる」からです。

 よって、課題に合った内容の作文を書けるようにするには、書いているときに課題を常に意識し、課題を何度も読み返し、書いた後も課題に合った内容になっているか、確認する習慣を付けることが重要です。

(2)推敲する:推敲とは、より良い文章になるように何度も書き直すことです。

 普段から、以下のようなチェック項目について推敲し続けることで、書いている最中にだんだん無意識にパパッとできるようになり、模試や入試本番にもそれらを速く正確にチェック・修正でき、説得力ある作文が書けるようになります。

 文法的に間違っている箇所はないか。
 漢字・送り仮名・表現・表記・言葉・接続詞の使い方に間違いがないか。
 意味が分かりにくい箇所・分からない箇所はないか。
 文章が分かりやすいか。
 説得力があるか。 
 課題に合った適切な文章構成法で書かれているか。
 論理が飛躍・矛盾していないか。
 論理が強引で無理がないか。
 論理に一貫性があるか。
 冗長でないか(無駄に長くないか、内容に重複がないか)。
 適切な根拠(理由・説明・具体例・体験談等)があるか等。

(3)自分が納得できる内容を書く:自分で説得力がないと思ったら、他人にはもっと説得力がありません。

 よって、書いているとき、読み返すときに、きちんと説得力があるかを自己評価しながら読み、説得力が乏しければ書き直します。

(4)添削してもらう:説得力があるかは、自分ではわかりにくい場合も多いので、親御様や信頼できる添削者に、説得力があるかの観点からも添削・説明してもらい、それをメモし、書き直す、という作業を行います。

 そしてそれを過去問10~20年分続けると、説得力がある文章と、説得力がない文章との違いが自分でも分かってきます。

(5)作文の二段階を意識する:作文を書く過程には二段階あります。

 ①第一段階:細部を書く:最初は、集中して、細かい内容、書ける内容、思いついた内容を、あまり選別せずに、下書きとして、どんどん書いていきます。

 下書きが制限字数以上になったら、文章構成を考えて、その下書きをつなげて作文を書きます。

 ②第二段階:俯瞰的に見てチェックする:自分の書いた文章を、他人が書いたもののように、リラックスして、高い視点から読んで、説得力があるか、内容が課題に一致しているか等、上記「推敲する」で書いた内容をチェックします。

 この二段階を知り、書くときに意識し実践すると、説得力ある文章が書けるようになります。

6.終わりに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。このページの内容がお役に立てれば幸いです。

皆さんの健闘を祈ります。

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